国際税務情報

TAX CONTENT

国外送金等調書とCRS情報で、海外の家賃と利子が把握された事例|正しく申告するとどうなるか

この記事の要点3行でわかる結論

  • 国税庁の公表事例です。譲渡所得だけを申告していた方が、国外送金等調書とCRS情報から海外の不動産賃料と口座の利子を把握され、所得税3年分で申告漏れ約2億6千百万円、追徴約1億1千6百万円となりました。
  • 国外送金等調書には、相手国・国外の金融機関名・口座番号・送金原因・マイナンバーまで記録されます。日本に送金していなくても、CRS情報で口座の残高が届いています。
  • 海外の家賃も口座の利子も、日本で申告できます。国外預金の利子は総合課税、国外中古建物は減価償却費の損益通算に制限がある点にご注意ください。

海外の家賃も、海外の口座の利子も、日本に送金していなくても日本の課税対象です。

国税庁が令和7年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」に、海外資産の申告漏れの事例が載っています。3年分で約2億6千百万円。追徴税額は加算税を含めて約1億1千6百万円でした。

この記事では、税務署がどうやって把握したのかと、では正しく申告するとどうなるのかの両方を見ていきます。海外に不動産や口座をお持ちの方に、そのまま当てはまる話です。

1. 何があったのか

国税庁が公表した事例

この方は、譲渡所得のみを申告していました。

税務署が国外送金等調書を検討したところ、国外からの送金が多額に上っていました。あわせてCRS情報から、国外金融機関の口座を持っていることが見込まれました。

調査を実施すると、国外の企業で勤務していた頃にA国に居住用の不動産を購入したという説明がありました。その不動産の現在の使用状況を確認したところ、不動産管理会社を通じて貸し付け、賃料を得ていたことが判明します。

さらにB国に開設した金融機関口座について、投資信託の運用収益の受入れと預金利子の受領があったことも把握されました。

結果として、国外不動産から生じた賃料収入と、国外金融機関口座から生じた利子収入について課税されています。

公表事例で課税された中身A国の不動産の賃料収入不動産所得B国口座の預金利子総合課税の利子所得B国口座の投資信託の運用収益種類により所得区分が変わる所得税3年分の申告漏れ約2億6千百万円追徴税額(加算税込み)約1億1千6百万円
国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」の調査事例より。

ここで押さえておきたいのは、公表文のどこにも「隠した」「仮装した」とは書かれていないことです。海外にいた頃に買った自宅を、帰国後に人に貸していた。海外の口座に残した資金が、投資信託と利子を生んでいた。よくある話です。

それでも3年分で2億6千万円の申告漏れになりました。意図がなくても金額は積み上がる——これが海外資産の怖さです。

国税庁令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況 Ⅳ 調査事例

2. 税務署は何を持っていたのか

税務署に届いていた2つの情報海外日本不動産・口座税務署国外送金等調書1回100万円超の送金が対象CRS情報101か国から年275万件
調書には相手国・国外の金融機関名・口座番号まで、CRS情報には口座残高まで載ります。この2つを申告内容と突き合わせて、合わない人が調査先に選ばれます。

国外送金等調書|1回100万円を超える送金が対象

国外への送金、国外からの送金の受領で1回の金額が100万円を超えると、取り扱った金融機関が税務署に「国外送金等調書」を提出します。

ここには何が書かれているのか。国税庁が公開している法定調書の記録仕様を見ると、記録される項目はかなり細かいものです。

区分記録される項目
取引の別国外送金か、国外からの送金の受領か
国内側の本人住所(居所)、氏名または名称、個人番号(マイナンバー)
送金の理由送金原因(国際収支番号と、原因の記載)
金額・日付国外送金等の年月日、金額(日本円)、外貨額、通貨名
国内側の口座金融機関の所在地・名称・支店名、口座の種類、口座番号
海外側の相手国外の送金者または受領者の氏名・名称、相手国名
海外側の口座国外の金融機関の名称・支店名、口座の種類、口座番号
摘要納税管理人がいる場合はその住所・氏名 など

相手国も、海外の銀行名も、海外の口座番号まで記録されます。「海外の口座のことは分からないはずだ」という前提は、この時点で成り立ちません。

しかも送金原因が書かれているので、税務署はそのお金が何のお金なのかの手がかりまで持っています。本件のように「国外からの送金が多額」であれば、その原因欄も当然に見られます。

国税庁F4-1 国外送金等調書(同合計表)

e-Tax法定調書の記録要領【国外送金等調書:350】

CRS情報|送金していなくても、残高が届く

送金していなければ調書は出ません。ではCRSです。

CRS(共通報告基準)は、非居住者の金融口座情報を税務当局どうしで定期的に交換する国際的な枠組みです。氏名・住所のほか、口座残高が含まれます。

日本が受け取った、日本居住者のCRS情報(令和6事務年度)
件数約275万件(101か国・地域から)
個人口座約272万件/残高 約9.6兆円
法人口座約3万件/残高 約8.1兆円

ふたつの誤解

「日本に送金していないから分からない」——CRSで口座の残高が届きます。

「送金したから、もう申告したことになっている」——調書は金融機関が出す資料です。申告の代わりにはなりません。むしろ、申告と食い違っていれば目立ちます。

国税庁令和6事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要

3. なぜ日本で申告しなければならないのか

所得税法は、納税義務者を居住者・非居住者などに分けています。

区分課税される所得の範囲
非永住者以外の居住者
(ほとんどの方がここ)
所得が生じた場所が国内か国外かを問わず、すべての所得
非永住者国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち国内で支払われ、または国外から送金されたもの
非居住者国内源泉所得に限られる

非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の方です。

日本に住んでいる日本人であれば、原則として全世界の所得が日本の課税対象です。現地の口座に入れたままでも、現地で税金を払っていても、日本での申告は必要です。

国税庁No.2010 納税義務者となる個人

4. 海外の不動産の賃料は、どう申告するのか

国外にある不動産を貸し付けて得た賃料は、不動産所得です。国内の不動産と同じ計算をします。

総収入金額賃料、更新料など。管理会社が手数料を引く前の総額です
必要経費現地の管理会社への手数料、修繕費、現地の固定資産税に相当する税、損害保険料、借入金の利子、減価償却費 など

手取りで振り込まれた金額だけを収入にしてしまうと、収入も経費も小さくなります。管理会社の精算書(ステートメント)を年分でそろえておくのが出発点です。

為替はいつのレートで換算するのか

外貨建ての取引は、原則としてその取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算します。

不動産所得については、継続して適用することを条件に、収入は取引日の電信買相場(TTB)、経費は電信売相場(TTS)によることもできます。月初・週初のレートや一定期間の平均値を使う方法も認められています。いずれにしても、途中で変えないことが条件です。

ここが要注意|国外中古建物の損益通算の制限

国外中古建物は、赤字を他の所得にぶつけられません国外中古建物の赤字令和2年分まで給与等と損益通算できた令和3年分から減価償却費の分は通算できない
簡便法などで耐用年数を計算した国外中古建物の減価償却費に相当する部分の損失が対象です(措置法41条の4の3)。

海外の中古不動産は、日本の簡便法で耐用年数を計算すると短くなり、減価償却費が大きく出ます。かつてはその赤字を給与所得などと損益通算する節税が広く行われていました。

令和3年分以後は、これができません。国外中古建物の不動産所得に損失が出た場合、そのうち簡便法等で計算した減価償却費に相当する部分の金額は、生じなかったものとみなされます。

他の所得との損益通算はもちろん、国内の不動産所得との内部通算もできません。「海外不動産で節税」という古い情報を見かけたら、令和3年より前のものだと考えてください。

※ この特例の適用を受けた国外中古建物を売却したときは、譲渡所得の計算で、生じなかったものとみなされた損失に相当する部分を減価償却費の累計額から控除します(売却時に調整されます)。

国税庁措置法第41条の4の3(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係

国税庁所得税基本通達 法第57条の3(外貨建取引の換算)関係

5. 海外の口座の利子は、どう申告するのか

ここは国内の預金と扱いが違います。間違えやすいところです。

課税方法確定申告
日本の銀行の預金利子源泉分離課税(15.315%+地方税5%)できません(源泉徴収で完結)
海外の銀行の預金利子総合課税の利子所得必要です

国内で源泉徴収されないため、源泉分離課税の対象から外れます。結果として総合課税、つまり給与や事業の所得と合算して累進税率がかかります。

所得の大きい方ほど重くなります

国内の預金利子なら一律20.315%で終わりますが、海外の預金利子は総合課税です。所得の大きい方であれば、所得税の最高税率45%に住民税10%が加わります。

「たかが利子」と思っていると、思ったより大きな税額になります。

利子所得は、収入金額がそのまま所得金額になります(必要経費は引けません)。

なお、投資信託の分配金は、その投資信託の種類によって所得区分が変わります。公社債投資信託か株式投資信託か、公募か私募か、外国投資信託かによって扱いが異なりますので、ここは個別に確認が必要です。本件の事例でも「投資信託の運用収益の受入れ」が把握されています。

国税庁確定申告の手引き 手順2(総合課税の利子所得)

国税庁No.1240 居住者に係る外国税額控除

6. 現地でも課税されている場合は

海外の不動産の賃料は現地でも課税されるのが普通です。利子についても、現地で源泉徴収されていることがあります。

同じ所得に日本と現地の両方で課税されると二重課税になりますので、外国税額控除で調整します。日本の所得税から、一定の限度額まで外国所得税額を差し引く仕組みです。

「現地で払ったから日本では申告しない」ではなく、「日本で申告したうえで、現地で払った分を控除する」という順番です。ここを逆にすると、控除も受けられず申告漏れだけが残ります。

7. 国外財産調書との関係

その年の12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出します。

海外に不動産と金融口座をお持ちであれば、合計で5,000万円を超えていることは珍しくありません。そして調書を出していないと、申告漏れが見つかったときに加算税が5%加重されます。逆に出していれば5%軽減されます。

8. 心当たりがあるときは、通知が来る前に

過去の申告に漏れがあった場合、いつ動くかで負担が変わります。

修正申告のタイミング過少申告加算税
調査の通知を受ける前に自主的に修正かかりません
通知後、更正を予知する前に修正5%(重い部分は10%)
調査を受けてから修正10%(重い部分は15%)

「重い部分」は、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分です。
これとは別に、納付が遅れた分の延滞税がかかります。令和8年は納期限の翌日から2か月まで年2.8%、それ以後は年9.1%です。

さかのぼる期間は、税務署が更正できるのは原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。本件の事例も3年分がまとめて課税されています。年数が増えるほど、延滞税も雪だるま式に増えます。

国税庁No.2026 確定申告を間違えたとき

国税庁No.9205 延滞税について

9. まとめ

  • 国外送金等調書には、相手国・国外の金融機関名・口座番号・送金原因・マイナンバーまで記録されます。
  • 送金していなくても、CRS情報で口座残高が101か国・地域から年275万件届いています。
  • 非永住者以外の居住者は、全世界の所得が日本の課税対象です。現地に置いたままでも申告が必要です。
  • 海外の家賃は不動産所得。国外中古建物は、令和3年分から減価償却費相当分の赤字を損益通算できません。
  • 海外の預金利子は総合課税です。国内の預金のように源泉分離で終わりません。
  • 現地で課税されていれば、日本で申告したうえで外国税額控除を使います。

海外に資産がある方の申告は、「知らずに漏れる」ことがほとんどです。悪意がなくても、3年分・5年分とまとまると金額は大きくなります。

海外の不動産や口座をお持ちで、これまでの申告に含めていたか自信がないという方は、早めにご相談ください。過去分をどう整理するか、いまの申告をどう組み立てるかを、状況を伺ったうえでご案内します。初回のご相談は無料です。

よくある質問

海外の家賃を現地の口座で受け取り、日本に送金していません。申告は必要ですか?

必要です。非永住者以外の居住者は、所得が生じた場所が国内か国外かを問わず、すべての所得について日本で課税されます。日本へ送金したかどうかは関係ありません。現地の口座に置いたままでも、その年の収入として申告します。

日本に送金していなければ、税務署には分からないのではありませんか?

分かる前提で考えてください。CRS(共通報告基準)により、令和6事務年度は日本居住者の口座情報が101か国・地域から約275万件、国税庁に届いています。氏名・住所のほか口座残高も含まれます。送金していなくても、口座の存在と残高は把握されています。

国外送金等調書には、何が書かれているのですか?

国税庁が公開している記録仕様によると、国外送金か受領かの別、国内側の本人の住所・氏名・個人番号、送金原因、年月日、金額(円と外貨)、国内側の金融機関と口座番号、相手国名、国外の送金者・受領者の氏名、国外の金融機関の名称・支店名・口座番号などが記録されます。1回100万円を超える送金が対象です。

海外の銀行預金の利子は、日本の預金と同じ20.315%ですか?

違います。日本の銀行の預金利子は源泉分離課税で完結しますが、海外の銀行の預金利子は国内で源泉徴収されないため、総合課税の利子所得として確定申告が必要です。給与など他の所得と合算して累進税率がかかりますので、所得の大きい方ほど税率は高くなります。

海外の中古不動産を買って節税する、という話を聞きました。いまも使えますか?

使えません。令和3年分以後、国外中古建物の不動産所得に損失が生じた場合、そのうち簡便法等で計算した減価償却費に相当する部分は生じなかったものとみなされます。他の所得との損益通算も、国内の不動産所得との内部通算もできません。令和3年より前の情報にご注意ください。

現地で税金を払っているのに、日本でも払うのですか?

二重に負担しないよう、外国税額控除で調整します。ただし順番が大切で、まず日本で申告したうえで、現地に納めた外国所得税額を一定の限度額まで日本の所得税から差し引きます。「現地で払ったから日本では申告しない」としてしまうと、控除も受けられず申告漏れだけが残ります。

外貨建ての家賃は、いつのレートで円に換算するのですか?

原則として、その取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)で換算します。不動産所得については、継続して適用することを条件に、収入は電信買相場(TTB)、経費は電信売相場(TTS)によることもできます。月初や一定期間の平均値を使う方法も認められていますが、途中で変えないことが条件です。

過去の分に漏れがありました。いま申告するとどうなりますか?

調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。通知後で更正を予知する前なら5%(重い部分10%)、調査を受けてからは10%(重い部分15%)です。いずれも延滞税は別にかかります。さかのぼる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。

<注記>この記事は、国税庁が公表した調査事例と法令等に基づいて、海外資産の申告の考え方をご説明するものです。細部の要件は省略している箇所があります。投資信託の分配金など、所得区分の判断が分かれるものは個別の確認が必要です。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の公表資料および法令等に基づいています。