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国外財産調書、出していない人のペナルティが出した人の特典を上回った|令和6年分の提出状況

この記事の要点3行でわかる結論

  • 令和6年分の国外財産調書は14,544件・8兆1,945億円。件数は9.8%、財産額は26.3%増えました。
  • 加算税の「軽減」を受けたのは221件・57億円。一方「加重」されたのは366件・170億円で、出していなかった側が上回っています。
  • 提出期限は翌年6月30日。12月31日時点で5,000万円を超える国外財産がある居住者(非永住者を除く)が対象です。

調書を出していなかったために加算税が重くなった人のほうが、出していたおかげで軽くなった人より多い——という数字が出ました。

国税庁が令和8年1月に「令和6年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。提出件数と財産額はどちらも増えています。そして、そこに添えられた加算税の特例措置の実績が、なかなか厳しい内容でした。

1. 令和6年分の提出状況

令和5年分令和6年分前年比
総提出件数13,243件14,544件+9.8%
総財産額6兆4,897億円8兆1,945億円+26.3%

件数は1割弱の増加ですが、財産額は26.3%も増えています。1件あたりの財産額が大きくなった、ということです。

財産の3分の2は有価証券

財産の種類総額構成比前年の構成比
有価証券5兆4,817億円66.9%63.0%
預貯金8,817億円10.8%13.1%
建物5,397億円6.6%7.8%
貸付金2,618億円3.2%2.8%
土地1,686億円2.1%2.5%
上記以外の財産8,611億円10.5%10.8%

有価証券が3分の2を占め、構成比も63.0%から66.9%に上がりました。海外の株式や投資信託の評価額が伸びたことが効いていると考えられます。

財産額の8割は東京国税局

東京局大阪局名古屋局その他
提出件数9,262件
(63.7%)
2,094件
(14.4%)
933件
(6.4%)
2,255件
(15.5%)
財産額6兆6,047億円
(80.6%)
7,200億円
(8.8%)
3,005億円
(3.7%)
5,694億円
(6.9%)

件数では東京局が63.7%ですが、財産額では80.6%。金額の大きい方が東京に集中しています。

国税庁令和6年分の国外財産調書の提出状況について(令和8年1月)

国税庁令和5年分の国外財産調書の提出状況について(令和7年1月)

2. ここからが本題|加重のほうが多い

国外財産調書には、加算税の軽減と加重という仕組みがついています。その適用実績が公表されました。

令和6事務年度に特例措置が適用された件数国外財産の申告漏れ調書を出していた加算税を5%軽減 221件出していなかった加算税を5%加重 366件
軽減は221件・57億円、加重は366件・170億円。所得税・相続税の実地調査の結果によるもので、出していなかった側が件数・金額とも上回っています。
令和5事務年度令和6事務年度
件数増差所得等件数増差所得等
軽減措置
(調書を出していた)
168件67億円221件57億円
加重措置
(出していなかった等)
303件105億円366件170億円

所得税及び相続税の実地調査の結果によるものです。

令和6事務年度は、加重措置が366件・170億円。軽減措置の221件・57億円を、件数でも金額でも上回りました。しかも加重の金額は、前年の105億円から170億円へ6割増えています。

この数字の読み方

軽減と加重は、そもそも母数が違います。軽減は「調書を出していた人のうち申告漏れがあった人」、加重は「出していなかった人(または記載が漏れていた人)のうち申告漏れがあった人」です。どちらが多いかを単純に比べる数字ではありません。

それでも、調査で国外財産の申告漏れが見つかった人のうち、6割超が調書を出していなかったという事実は残ります。調書を出していない人ほど、申告漏れも起きている、という関係が見えます。

3. 仕組み:5%の軽減、5%の加重、書類を出さないと10%

調書の状況あとで申告漏れが見つかったとき
期限内に提出し、その財産が記載されている過少申告加算税等が 5%軽減
期限内に提出していない
または、記載すべき財産の記載がない
過少申告加算税等が 5%加重
さらに、税務署からの書類の提示・提出の求めに応じない加重の割合が 10% に引き上げ

加算税の本来の割合は、申告漏れの金額や申告の有無によって変わります。上記はそこからの増減です。

出しているかどうかで、最大15ポイントの差がつきます(軽減の▲5%と、書類不提示の+10%の差)。

罰則もあります

偽りの記載をして提出した場合、または正当な理由なく期限内に提出しなかった場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されることがあります。ただし、期限内に提出しなかった場合については、情状によりその刑を免除できることとされています。

※ 令和7年6月1日の刑法改正により、懲役は拘禁刑に改められています。

国税庁No.7456 国外財産調書の提出義務

4. 誰が出すのか、いつまでに出すのか

その年の12月31日時点で、価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を持っている居住者(非永住者を除く)が対象です。日本国内にある財産は含みません。

提出期限は「翌年6月30日」。確定申告と同じではありません令和5年分から、確定申告より後ろにずれた12月31日この日の残高で判定3月15日所得税の確定申告期限6月30日国外財産調書の提出期限
令和4年分以前は翌年3月15日でした。令和4年度税制改正で後倒しになっています。

提出期限は翌年の6月30日です。令和4年分以前は確定申告と同じ3月15日でしたが、令和5年分から後ろにずれています。「確定申告と一緒に出すもの」と思っていると、期限を取り違えます。

5. 相続でも同じことが起きています

国外財産調書と同じ構図が、相続税の調査でも出ています。令和6事務年度の数字です。

令和5事務年度令和6事務年度前年比
海外資産関連事案の実地調査件数947件1,359件143.5%
海外資産に係る非違件数168件209件124.4%
海外資産に係る重加算税の賦課件数6件14件233.3%
海外資産に係る申告漏れ課税価格62億円97億円155.5%
非違1件当たりの申告漏れ課税価格3,708万円4,636万円125.0%

調査件数が4割以上増え、重加算税の賦課件数は6件から14件へ2倍以上になりました。重加算税は、仮装や隠ぺいがあったと判断されたときに課されるものです。件数自体は多くありませんが、増え方が目を引きます。

相続税の調査では、亡くなった方が生前に出していた(あるいは出していなかった)国外財産調書が、そのまま資料として使われます。ご自身の代で出しておくことが、次の代の負担を減らすことにもつながります。

国税庁令和6事務年度における相続税の調査等の状況(令和7年12月)

6. 出し忘れやすいのは、こういう財産です

海外で働いていた頃の口座帰国後もそのままにしている口座。残高が動いていなくても、12月31日時点の残高で判定します
海外の証券口座の含み益時価で判定するため、売っていなくても評価額が上がれば5,000万円を超えることがあります。有価証券が全体の66.9%を占めるのはこのためです
相続で引き継いだ海外資産ご両親が海外に持っていた不動産や口座。相続した年の年末で判定します
海外の年金・保険「上記以外の財産」に含まれます。保険契約に関する権利なども対象です

5,000万円は合計額で判定します。1つ1つは小さくても、合わせると超えていた、というケースが少なくありません。

7. まとめ

  • 令和6年分の国外財産調書は14,544件・8兆1,945億円。財産額は前年より26.3%増えました。
  • 加重措置は366件・170億円で、軽減措置の221件・57億円を上回りました。加重の金額は前年から6割増えています。
  • 出しているかどうかで、加算税は最大15ポイント変わります。罰則もあります。
  • 相続税の海外資産関連の調査も、件数が43.5%増、重加算税は6件から14件に増えました。
  • 提出期限は翌年6月30日です。確定申告と同じではありません。

「5,000万円を超えているかどうか、微妙なところで分からない」というご相談をよくいただきます。判定だけでもお受けしていますので、年末が近づく前に一度確認しておくことをおすすめします。初回のご相談は無料です。

よくある質問

国外財産調書は、いつまでに出すのですか?

その年の12月31日時点の状況を、翌年の6月30日までに提出します。令和4年分以前は確定申告と同じ翌年3月15日でしたが、令和4年度税制改正により令和5年分から6月30日に後ろ倒しされました。財産債務調書も同じ改正です。

5,000万円は、財産ごとに見るのですか?

合計額で見ます。その年の12月31日時点で、国外にある財産の価額の合計額が5,000万円を超えるかどうかで判定します。日本国内にある財産は含みません。1件ずつは小さくても、合算すると超えているケースが多くあります。

調書を出していないと、どれくらい不利になりますか?

その国外財産について所得税や相続税の申告漏れが見つかった場合、過少申告加算税等が5%加重されます。さらに、税務署から求められた書類の提示等に応じないと、加重の割合は10%になります。期限内に出していれば5%軽減されますので、差は最大15ポイントです。

売っていない株式の値上がりでも、5,000万円を超えることはありますか?

あります。国外財産調書は時価などで評価しますので、売却していなくても評価額が上がれば基準を超えます。令和6年分は有価証券が総財産額の66.9%を占め、構成比も前年の63.0%から上がりました。年末時点の評価額をご確認ください。

非永住者でも提出が必要ですか?

必要ありません。提出義務があるのは居住者のうち非永住者以外の方です。非永住者とは、日本国籍がなく、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

出し忘れていたことに気づきました。いまから出せますか?

提出できます。期限後であっても、調査の通知を受ける前に提出すれば、加算税の軽減措置の適用を受けられる場合があります。正当な理由なく期限内に提出しなかった場合は罰則の対象にもなりますので、気づいた時点で早めにご対応ください。

財産債務調書とは何が違うのですか?

国外財産調書は国外財産だけを対象とし、5,000万円超で提出義務が生じます。財産債務調書は国内外の財産と債務を対象とし、所得2,000万円超かつ財産3億円以上等、または財産10億円以上で義務が生じます。両方に該当する場合、国外財産は国外財産調書に記載し、財産債務調書ではその旨を記載します。

<注記>この記事は、国税庁が公表した資料に基づいて制度の全体像をご説明するものです。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の公表資料および法令等に基づいています。