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外国の収入から税金が差し引かれたら、外国税額控除を使いましょう!
この記事の要点3行でわかる結論
- 日本の居住者や内国法人は全世界の所得に日本の税金がかかるため、海外で源泉徴収された所得は二重に課税されます。これを解消するのが「外国税額控除」です。
- 外国の税金を経費にする方法も選べますが、税金から直接差し引く外国税額控除のほうが、ほとんどの場合で有利です。控除には限度額があり、引ききれない分は3年間繰り越せます。
- 個人の海外投資でも使えます。配当や利子の支払通知書を保管し、確定申告で「外国税額控除に関する明細書」を添付してください。
海外の株式や債券からの配当・利子、海外不動産の賃料、海外企業から受け取るロイヤルティ。こうした収入には、支払われる時点で現地の税金が差し引かれていることがあります。一方で、日本に住んでいる個人や日本の法人は、海外で得た所得にも日本の税金がかかります。同じ所得に2か国が課税する、いわゆる二重課税です。
この二重課税を解消する制度が「外国税額控除」です。円安が続いて外貨建ての収入を持つ方が増えた一方で、控除を使わずに申告している例が目立ちます。この記事では、制度の仕組みと計算方法、経費処理との違い、個人が使うときの注意点を説明します。
1. 二重課税はなぜ起きるのか
日本の税法は、居住者と内国法人に対して「全世界所得課税」を採用しています。国内で稼いだ所得も、海外で稼いだ所得も、すべて合算して日本の税金を計算するという考え方です。
ところが、その海外の所得には、稼いだ国の税金がすでにかかっています。たとえば海外の会社から配当を受け取るとき、現地の税率で源泉徴収されたうえで残りが振り込まれます。日本でその配当を申告すれば、日本の税金もかかります。
この重なった部分をそのままにしておくと、海外への投資や事業展開は税負担の面で不利になります。そこで、外国で払った税金を日本の税金から差し引く仕組みが設けられています。
2. 控除できる金額はどう計算するのか
計算の考え方を、簡単な数字で確認します。全世界所得が1,000、そのうち国外所得が300、日本の税率が35%、外国の税率が20%とします。
日本の税金350から、外国で納めた60を差し引いて290を納めます。外国の60と合わせた税負担の合計は350で、すべて日本国内で稼いだ場合と同じ水準に収まります。これが二重課税の解消です。
ただし、控除できる金額には上限があります。「日本の税金のうち、国外所得に対応する部分」までしか差し引けません。上の例では、350 × 300 ÷ 1,000 = 105 が控除限度額です。外国の税金60は限度額の範囲内なので、全額を控除できました。
外国の税率が日本より高い国で稼いだ場合には、外国の税金が限度額を超えることがあります。超えた部分はその年には控除できませんが、翌年以後3年間にわたって繰り越し、限度額に余裕がある年に控除できます。逆に限度額に余裕が出た年は、その余裕額を3年間繰り越して、後の年の超過分に充てることができます。
3. 経費にする方法と、どちらが有利か
外国税額控除を使わずに、外国で払った税金を単純に経費(損金)として処理することも認められています。計算が簡単なため、こちらを選んでいる会社も見かけます。しかし、税負担で比べると差が出ます。
経費にした場合、外国税額60が所得から差し引かれるだけなので、日本の税金が減るのは60 × 35% = 21にとどまります。控除であれば60がまるごと税金から引かれます。外国税額の全額を取り戻したいなら、控除を選ぶべきです。
なお、法人の場合、外国税額控除を適用するには申告書に控除額の記載と明細書の添付が必要です。適用を忘れて申告してしまうと、後から更正の請求で取り戻すことは原則としてできません。申告前に、海外からの入金に外国税が引かれていないかを必ず確認してください。
4. 個人の海外投資でも使える
外国税額控除は所得税にもあります。海外の証券口座で株式や債券を保有している方、海外の投資信託から分配金を受け取っている方、海外に不動産を持っている方は、対象になる可能性が高い制度です。
使うためには確定申告が必要です。次の点を押さえてください。
- 証券会社や現地の支払者から届く支払通知書、取引報告書を保管する。外国税額の証明として使います。
- 確定申告書に「外国税額控除に関する明細書」を添付する。国名、所得の種類、外国税額、納付日を記載します。
- 控除限度額の計算に使う「所得総額」と「国外所得金額」は、所得税の計算と同じ区分で集計する。不明な点は顧問税理士に確認してください。
個人の海外投資については、所得の種類ごとの課税関係を別の記事にまとめています。
5. みなし外国税額控除とは何か
一部の新興国との租税条約には、「みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)」という仕組みがあります。現地の政策で税金が減免され、実際には源泉徴収されていなくても、条約で定めた税率で納めたものとみなして日本で控除できる制度です。
対象となる国と所得は租税条約ごとに決まっており、近年は条約改正のたびに縮小や廃止が進んでいます。過去に対象だった国が現在は対象外になっていることもあるため、適用する前に該当する租税条約の現行の規定を確認してください。証券会社からの案内書類に記載があれば、それも保管しておきます。
6. 2027年から何が変わるのか
令和8年度税制改正により、2027年(令和9年)1月1日以後の所得から、次の変更が予定されています。
- 復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられ、課税期間は2047年(令和29年)まで延長されます。
- 所得税額の1%を課す「防衛特別所得税」が新設されます。復興特別所得税と合わせた負担率は2.1%で変わりません。
外国税額控除の限度額は、所得税と復興特別所得税それぞれについて計算する仕組みです。防衛特別所得税が加わった後の控除の順序や限度額の扱いについては、国税庁からの案内を待つ必要があります。この記事の計算例は、2026年分(令和8年分)までの取扱いに基づいています。
7. まとめ
- 日本の居住者・内国法人は全世界所得に課税されるため、海外で源泉徴収された所得は二重課税になる。
- 外国税額控除を使えば、外国で払った税金を日本の税金から直接差し引ける。限度額を超えた分は3年間繰り越せる。
- 経費処理も選べるが、取り戻せるのは外国税額の税率分だけ。控除のほうが有利。
- 個人も確定申告で使える。支払通知書を保管し、明細書を添付する。
- 2027年分以後は防衛特別所得税の新設に伴い、控除の計算に変更が入る見込み。
海外からの入金に税金が引かれているが、申告で控除しているか分からない場合
当事務所では、海外投資や海外取引がある法人・個人の申告を多く扱っています。過去分の控除漏れの確認も含めてご相談ください。お問い合わせはこちら
よくある質問
外国税額控除とは何ですか?
外国税額控除とは、外国で納めた税金を日本の税額から直接差し引く制度です。日本の居住者と内国法人は全世界の所得に日本の税金がかかるため、海外で源泉徴収された所得は二重課税になります。その重なりを解消するための仕組みです。
外国税額控除の限度額はどう計算しますか?
日本の税額に、国外所得金額が所得総額に占める割合を掛けて計算します。全世界所得1,000・国外所得300・日本の税額350であれば、350×300÷1,000=105が控除限度額です。限度額を超えて引ききれない分は、翌年以後3年間繰り越せます。
外国の税金は、経費にするのと控除するのとどちらが有利ですか?
多くの場合は外国税額控除のほうが有利です。経費にすると税金が減るのは外国税額に税率を掛けた分だけですが、控除なら外国税額の全額が税金から引かれます。税率35%の例では、外国税額60のうち経費処理では21しか取り戻せません。
個人の海外投資でも外国税額控除は使えますか?
使えます。海外の株式や債券の配当・利子、海外の投資信託の分配金、海外不動産の賃料などが対象になります。適用には確定申告が必要で、支払通知書や取引報告書を保管し、確定申告書に「外国税額控除に関する明細書」を添付します。
申告で外国税額控除を忘れたら、あとから取り戻せますか?
法人の場合は原則としてできません。適用には申告書への控除額の記載と明細書の添付が必要で、忘れて申告すると後から更正の請求で取り戻すことは原則としてできません。申告前に、海外からの入金に外国税が引かれていないかを必ず確認してください。
<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者、海外投資をされている個人の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。計算例は考え方を示すために簡略化しています。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。





