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海外へお金を送る人、海外からお金を送ってもらう人は、国外送金調書のことを知っておこう

この記事の要点3行でわかる結論

  • 100万円を超える国外への送金・国外からの受領があると、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出されます。提出するのは金融機関で、送る人・受け取る人の手続きではありません。
  • 調書には送金者・受領者の氏名や住所、マイナンバー、相手国、金額、送金原因などが記載されます。令和6事務年度の提出枚数は923万枚で、年々増えています。
  • 内容に疑義があると税務署から「お尋ね」が届きます。国外財産調書やCRSと組み合わせて国外の資産が把握される前提で、申告の準備をしておくことが大切です。

海外に住む家族への送金、海外の不動産や証券の購入代金、海外取引の決済、相続や贈与を受けた資金の受け取り。国境をまたぐお金の動きは年々増えています。その金額が100万円を超えると、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」という書類が提出されます。

この記事では、国外送金等調書とはどんな制度で、何が税務署に伝わり、その後どういう連絡が来る可能性があるのかを整理します。あわせて、国外財産調書やCRS(共通報告基準)といった、国外資産を把握する他の仕組みにも触れます。

1. 国外送金等調書とは

「調書」とは、税務署に提出される報告書類のことです。国外送金等調書は、国外へ送金した人・国外から送金を受け取った人の情報を、金融機関が税務署へ報告する書類です。

根拠となる法律は「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」です。平成10年(1998年)4月から施行されています。

100万円を超える資金の出入りは、金融機関から税務署へ報告される日本海外金融機関相手方の口座国外への送金1件100万円超が対象国外からの受領1件100万円超が対象
金融機関が「国外送金等調書」を作成し、所轄の税務署へ提出します。送る人・受け取る人が自分で出す書類ではありません

国外との資金移動そのものを止める制度ではありません。国境をまたいだお金の動きを税務署が把握し、申告内容と突き合わせるための情報収集の仕組みです。

2. 誰が、いくらから提出するのか

調書を作成して税務署に提出するのは、送金を取り扱った金融機関です。送る個人や法人が何かを書いて提出するわけではありません。

対象になるのは、1件あたりの金額が100万円を超える国外送金と国外からの受領です。この基準は平成21年(2009年)4月から適用されています。それ以前は200万円超でした。

自分が提出する書類ではないから関係ない、とは言えません。海外と取引のある会社、海外に投資している個人、海外に家族が住んでいる方は、自分の送金がどう記録されるのかを知っておくべきです。


やました君

「100万円以下に分けて送れば調書は出ない」と考える方がいますが、それは筋が違います。調書が出るかどうかと、申告が必要かどうかは別の話です。分けて送っても、贈与税や所得税の申告義務は変わりません。むしろ不自然な分割送金は、金融機関側の確認の対象になります。

3. どんな情報が税務署に届くのか

調書に記載される主な事項は次のとおりです。

  • 国内から国外へ送金した人の氏名・住所
  • 国外から送金を受け取った人の氏名・住所
  • 送金・受領を行った年月日
  • 取引の相手方の氏名
  • マイナンバーまたは法人番号
  • 取次ぎをした金融機関の名称
  • 相手国名
  • 使用した口座
  • 送金金額(本邦通貨・外国通貨)
  • 送金原因
  • 備考欄(納税管理人に関する事項など)

「送金原因」は、その資金移動の目的です。輸入代金の支払い、不動産の購入、生活費の送金、贈与といった区分が記録されます。金融機関に送金を依頼するときに目的を尋ねられるのは、この記載のためでもあります。

国税庁F4-1 国外送金等調書(同合計表)

4. 調書は年間何枚出ているのか

国税庁レポートで公表されている提出枚数は、次のように推移しています。

国外送金等調書の提出枚数は増え続けている726万枚令和3事務年度790万枚令和4事務年度832万枚令和5事務年度923万枚令和6事務年度
令和3事務年度から令和6事務年度までの4年間で約200万枚増えています(国税庁レポート2026)

令和6事務年度は923万枚です。1年の営業日を240日とすると、1日あたり約3万8千枚が作成されている計算になります。1件が100万円超であることを考えれば、把握されている資金移動の規模の大きさが分かります。

国税庁レポート2026(適正・公平な課税と徴収)

5. 税務署から「お尋ね」が届いたら

提出された調書の内容と、申告されている所得や財産が合わないと判断されると、税務署から「お尋ね」という書面が届くことがあります。送金の目的、資金の出どころ、相手方との関係などを尋ねる内容です。

「お尋ね」は行政指導であり、税務調査そのものではありません。しかし、回答しないまま放置すると、実地の確認に進む可能性があります。心当たりのある内容であれば、事実にもとづいて丁寧に回答するのが結果として最も早く終わります。

実務でよく問題になるのは、次のような場面です。

  • 海外に住む親族から生活費として受け取った資金が、実質的には贈与にあたる場合
  • 海外の不動産や証券を売却した代金を日本に送金したが、譲渡所得を申告していない場合
  • 相続で取得した国外資産を換金して受け取ったが、相続税の申告に含めていない場合

いずれも、送金そのものが問題なのではなく、対応する申告がされていないことが問題です。回答内容に迷う場合は、回答書を出す前に税理士に相談してください。

6. 送金調書だけではない ― 国外財産調書とCRS

国外の資産を把握する仕組みは、送金調書だけではありません。性格の異なる制度が組み合わさっています。

制度提出する人対象になる基準時期
国外送金等調書金融機関1件100万円超の国外送金・受領取引のつど
国外財産調書本人(居住者。非永住者を除く)12月31日時点の国外財産の合計が5,000万円超翌年6月30日まで
CRS(共通報告基準)金融機関非居住者の金融口座情報毎年(各国税務当局と自動交換)

国外財産調書は本人が提出する書類です。提出しておけば、後日その財産に関する申告漏れが見つかっても加算税が5%軽減されます。逆に、提出しなかった場合や記載がなかった場合は5%加重されます。正当な理由なく期限内に提出しなかったときや、虚偽の記載をしたときは、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。

直近の提出状況は、令和6年分で14,544件・総額8兆1,945億円です。財産の種類では有価証券が66.9%を占めています。

国税庁No.7456 国外財産調書の提出義務

国税庁令和6年分の国外財産調書の提出状況

CRSは、国内の金融機関が非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、租税条約等の情報交換規定に基づいて各国の税務当局と自動的に交換する仕組みです。日本の居住者が海外に持つ口座の情報も、相手国から日本に提供されます。

国税庁CRSコーナー


やました君

送金調書で「動いたお金」、国外財産調書で「持っている財産」、CRSで「海外の口座残高」が、それぞれ別の経路で税務署に届きます。1つの取引が3つの制度に引っかかることも珍しくありません。海外資産は見えている、という前提で申告の組み立てを考えてください。

7. まとめ

  • 100万円を超える国外送金・国外からの受領は、金融機関から税務署へ国外送金等調書として報告される。
  • 提出するのは金融機関。送る人・受け取る人の手続きは不要だが、氏名・住所・マイナンバー・相手国・送金原因まで記録される。
  • 提出枚数は令和6事務年度で923万枚。この4年間で約200万枚増えている。
  • 申告内容と合わないと「お尋ね」が届く。放置せず、事実にもとづいて回答する。
  • 国外財産調書(5,000万円超・翌年6月30日まで)やCRSと合わせて、国外資産は把握される前提で考える。

海外に資産をお持ちの方は、あわせてこちらもご確認ください。

税務署から国外送金についての「お尋ね」が届いた場合

当事務所では、国外送金のお尋ねへの回答、国外財産調書の作成、海外資産に関する申告のご相談をお受けしています。回答書を出す前にご相談ください。お問い合わせはこちら

よくある質問

国外送金等調書は、いくらから出されますか?

1件あたりの金額が100万円を超える国外送金と国外からの受領が対象です。この基準は平成21年4月から適用されています(それ以前は200万円超)。作成して税務署へ提出するのは送金を取り扱った金融機関で、送る人・受け取る人の手続きは必要ありません。

国外送金等調書には、どんな情報が書かれますか?

送金した人・受け取った人の氏名と住所、マイナンバーまたは法人番号、送金・受領の年月日、取引の相手方の氏名、相手国名、使用した口座、本邦通貨と外国通貨の金額、送金原因などです。金融機関が送金の目的を尋ねるのは、この送金原因を記載するためでもあります。

100万円以下に分けて送れば調書は出ませんか?

分けても意味はありません。調書が出るかどうかと、申告が必要かどうかは別の話です。分割して送っても贈与税や所得税の申告義務は変わりません。むしろ不自然な分割送金は、金融機関側の確認の対象になります。

税務署から国外送金の「お尋ね」が届いたら、どうすればよいですか?

事実にもとづいて回答してください。「お尋ね」は行政指導であり、税務調査そのものではありません。ただし回答せずに放置すると、実地の確認に進む可能性があります。回答内容に迷う場合は、回答書を出す前に税理士に相談してください。

国外送金等調書は、年間どれくらい提出されていますか?

令和6事務年度で923万枚です。令和3事務年度の726万枚から4年間で約200万枚増えています(国税庁レポート2026)。国外財産調書やCRSと合わせ、国外の資産や資金移動は把握される前提で申告を組み立ててください。

<注記>この記事は、海外との資金のやり取りがある個人・法人の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。