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貿易(輸出売上)の消費税は間違えやすいので、会計ソフトの設定を変更しておこう!(弥生会計・Freee・マネーフォワードクラウド編)

この記事の要点3行でわかる結論

  • 会計ソフトの売上科目は、初期設定で国内の課税売上10%になっています。輸出売上をそのまま入力すると、免税であるべき売上に10%が当たり、納める消費税が過大になります。
  • 「消費税がかからない」に見える売上でも、免税・不課税・非課税は別物です。課税売上割合の計算では、免税は分子と分母の両方、非課税は分母だけ、不課税はどちらにも入りません。
  • 輸入取引には専用の税区分が必要です。輸入消費税は国税7.8%と地方消費税2.2%に分かれ、課税標準も仕入価格そのものではありません。決算では税区分ごとの集計を見て、免税売上高が出ているかを確認してください。

貿易を行う会社の記帳でいちばん多い誤りは、輸出売上に国内の課税売上10%が当たったまま決算を迎えることです。金額の入力を間違えたわけではなく、勘定科目の初期設定がそのまま使われているだけなので、見た目では気づきません。

この記事では、会計ソフトの税区分をどう考えて設定すればよいかを整理します。ソフトごとの画面や操作手順は、バージョンによって変わります。設定の入口は各社のヘルプで最新のものをご確認ください。ここでは、どのソフトでも共通する考え方だけを書きます。

1. 初期設定のままだと、輸出売上に10%が当たる

会計ソフトの勘定科目には、あらかじめ税区分が結びついています。売上高であれば「課税売上10%」が既定です。国内の商売だけを想定した設定ですから、これ自体は自然な作りです。

ところが輸出売上は、消費税が免除される取引です。既定のまま入力すると、免税であるべき売上が課税売上として集計されます。売上が1,000万円あれば、そこに含まれるとされる消費税は約90万9千円です。輸出免税なら本来は0円ですから、その分だけ納税が過大になります。還付を受けるべき会社が納税になっていることさえあります。

国税庁No.6551 輸出取引の免税

取引ごとに税区分を選び直す運用でも処理はできます。ただ、人が毎回判断する方式は必ずどこかで抜けます。次の2つのどちらかで、選ぶだけで税区分が決まる状態にしてください。

  • 勘定科目を分ける。「輸出売上」という勘定科目を作り、その科目の税区分を輸出免税に固定する。
  • 補助科目・品目などで分ける。売上高の下に「輸出売上」「国内売上」を作り、それぞれに税区分を固定する。

勘定科目を分ける方法は、試算表を見ただけで輸出の規模がわかる利点があります。補助科目で分ける方法は、損益計算書の見た目を変えずに済む利点があります。どちらでも構いませんが、補助科目で分ける場合は「補助科目なし」で登録できない設定にしておくと、抜けが起きません。

2. 「消費税がかからない」は、どう分かれるのか

税区分の設定でつまずく原因は、たいてい区分そのものの理解にあります。同じ「消費税がかからない」でも、免税・不課税・非課税は制度上まったく別のものです。

まず国内取引かどうか、それから3つに分かれる売上を計上するとき国内取引→ 課税10% / 免税0% / 非課税国外取引→ 不課税(対象外)
資産の譲渡は、譲渡の時に資産が所在していた場所で判定します(消費税法4条3項1号)

まず、その取引が国内取引かどうかを判定します。資産の譲渡であれば、譲渡が行われる時にその資産が所在していた場所で判定します(消費税法4条3項1号)。国内になければ、そもそも消費税の課税の対象外です。

国税庁No.6210 国外取引

国税庁No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例

国内取引であれば、次に課税・免税・非課税に分かれます。輸出取引は国内取引ですが、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考え方から、税率0%として免除されます。

国税庁No.6201 非課税となる取引

4つの区分を並べると、次のようになります。

区分代表例売上に乗る消費税課税売上割合対応する仕入の控除
課税国内の商品販売、国内向けサービス10%(軽減8%)分子・分母の両方できる
免税(輸出免税)輸出販売、非居住者への役務提供の一部0%分子・分母の両方できる
非課税土地の譲渡・貸付け、住宅家賃、利息、有価証券の譲渡なし分母だけ原則できない
不課税(対象外)国外取引、三国間取引、受取配当金、保険金、寄附金なし分子・分母のどちらにも入らない国内で払った分は控除できる

会計ソフトの税区分名は各社で違いますが、どのソフトにもこの4つに対応する区分が用意されています。名前が違っても、選ぶときはこの表のどれに当たるかで考えてください。

3. 区分を取り違えると、課税売上割合はどう動くか

4つの区分を分ける実益は、課税売上割合に表れます。国税庁は課税売上割合の計算について、次のように示しています。

  • 分母の総売上高=国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額。課税売上高と輸出による免税売上高、非課税売上高の合計額になる。
  • 分子の課税売上高=国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額。これには輸出による免税売上高が含まれる。
  • 総売上高と課税売上高の双方に、不課税取引に係る売上高は含まれない。

国税庁No.6405 課税売上割合の計算方法

国税庁No.6401 仕入控除税額の計算方法

ここから、区分の取り違えが何を動かすかがわかります。

  • 輸出売上を課税10%にした場合。課税売上割合は変わりませんが、売上に消費税が乗るため納税額が増えます。いちばん金額の大きい誤りです。
  • 輸出売上を不課税(対象外)にした場合。納税額はいったん合いますが、分子と分母の両方から抜けます。非課税売上がある会社では課税売上割合が下がり、控除できる仕入税額が減ります。
  • 三国間取引などの国外取引を免税にした場合。逆に分子と分母が膨らみます。課税売上割合が実態より高く出ます。
  • 非課税売上を不課税にした場合。分母から抜けて課税売上割合が上がります。過大な控除につながります。

課税売上割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下であれば、課税仕入れの消費税額を全額控除できます。この条件を外れると、個別対応方式か一括比例配分方式で按分することになり、割合の1%が控除額に直接効いてきます。


やました君

「どちらも税金がかからないから同じ」と考えて、輸出売上と国外取引を同じ税区分にまとめている帳簿をよく見かけます。納税額が同じでも、課税売上割合が動けば控除できる金額が変わります。国外取引が混ざる会社ほど、区分を分けておく意味が大きくなります。

4. 輸出売上に免税を当てるには、証明書類の保存が要る

税区分を輸出免税にしただけでは足りません。輸出免税の適用を受けるには、その取引が輸出取引等であることの証明が必要です。区分に応じた書類を整理し、納税地等に7年間保存します。

輸出の方法保存すべき書類
輸出の許可を受ける貨物輸出許可書(税関長が証明した書類)
郵便物で、資産価額が20万円を超えるとき輸出許可書(税関長が証明した書類)
郵便物で、資産価額が20万円以下の小包郵便物・EMS郵便物日本郵便から交付を受けた引受けを証する書類、および発送伝票等の控え(事業者名・住所、品名ごとの数量と価額、受取人、引受年月日を記載したもの)
郵便物で、資産価額が20万円以下の通常郵便物引受けを証する書類(品名ごとの数量と価額を追記したもの)
非居住者への無体財産権の譲渡・貸付け、役務の提供契約書その他の書類で一定事項が記載されたもの

国税庁No.6551 輸出取引の免税

資産価額はFOB価格で、20万円を超えるかどうかは原則として郵便物1個当たりで判定します。同一の受取人に2個以上に分けて差し出す場合は、合計額で判定します。越境ECのように少額の発送を繰り返す会社は、ここが実務の負担になります。

会計ソフトの設定としては、輸出売上の仕訳に輸出許可書や送り状の番号を摘要へ入れておく、あるいは証憑ファイルを仕訳に添付しておくと、あとから探す手間がなくなります。

5. 輸入取引には専用の税区分を用意する

輸入がある会社は、売上側だけでなく仕入側の設定も必要です。輸入消費税は、国内の課税仕入れとはまったく別の扱いになります。

まず、税額の中身が違います。10%は国税である消費税7.8%と、地方消費税2.2%の合計です。地方消費税は国税分の22/78として計算されます。

輸入消費税は国税と地方消費税に分かれている国税分(消費税)7.8%地方消費税分(国税分の22/78)2.2%輸入時に税関へ納める合計10%
課税標準はCIF価格に関税と個別消費税を加えた金額。仕入価格に10%を掛けた金額ではありません

国税庁No.6303 消費税および地方消費税の税率

次に、課税標準が違います。輸入消費税の課税標準は、関税課税価格(CIF価格)に関税額と個別消費税額を加えた金額です。仕入代金そのものに10%を掛けた金額ではありません。

国税庁No.6563 輸入取引

そして、控除の要件も違います。輸入消費税の控除には帳簿と輸入許可通知書等の保存が必要で、適格請求書(インボイス)は不要です。国内の課税仕入れとは要件が別なので、税区分も分けておく必要があります。

会計ソフトには、輸入消費税を国税分と地方消費税分に分けて登録するための専用の税区分が用意されています。海外の仕入先へ支払う商品代金は不課税(国外取引)、税関へ納める消費税は輸入の税区分、という2本立てになります。この設定をしないまま通関業者への支払をまとめて課税仕入れ10%で処理すると、控除できる税額がずれます。

6. 設定しても還付にならないのは、どんなときか

税区分の設定は、課税事業者で一般課税(原則課税)である会社にとって意味があります。次の2つの場合、輸出売上があっても還付は受けられません。

  • 免税事業者。消費税の申告そのものを行わないため、還付もありません。輸出中心の会社は、課税事業者を選択するかどうかを検討することになります。
  • 簡易課税を選択している。売上に対するみなし仕入率で控除税額を計算するため、実際に払った消費税は関係ありません。免税売上に対応する仕入も控除できません。

いずれも届出書の提出期限と、いったん選択すると2年間はやめられない縛りがあります。設定を変える前に、この判断を先に済ませてください。

国税庁No.6501 納税義務の免除

7. 決算で設定が効いているかを確認する

設定した気になっていても、実際に集計されているかは別の話です。決算では、勘定科目の残高ではなく税区分ごとの集計を見てください。ソフトによって名称は違いますが、消費税集計表・税区分別集計表・消費税区分別表といった帳票が用意されています。

確認する点は次のとおりです。

  • 免税売上高が出ているか。0円のままなら、設定が効いていないか、既定の税区分で入力されています。
  • 免税売上高が、輸出売上の勘定科目の残高と一致するか。一致しなければ、一部の仕訳だけ税区分が違っています。
  • 課税売上10%に、輸出売上が混ざっていないか。売上科目別に税区分の内訳を出すと見つかります。
  • 不課税(対象外)の売上高に、輸出売上が入り込んでいないか。
  • 輸入消費税が、国税分と地方消費税分に分かれて集計されているか。

期中に勘定科目の税区分を変更しても、変更前に入力済みの仕訳はさかのぼって直りません。設定を直したときは、期首から見直しの日までの仕訳を必ず洗い直してください。

売上をいつ計上するかによって、どの課税期間の免税売上高になるかも変わります。計上基準は先に決めて、社内で統一しておく必要があります。


やました君

設定を変えるのは10分で終わります。ところが、間違ったまま3年分の申告を終えていると、直すのに何日もかかります。輸出や輸入を始めた期は、最初の月次でいったん税区分別の集計を出して、意図した区分に落ちているかを見ておいてください。

8. まとめ

  • 会計ソフトの売上科目は初期設定が課税10%。輸出売上は勘定科目か補助科目を分けて、税区分を輸出免税に固定する。
  • 免税・不課税・非課税・課税は別物。課税売上割合では、免税は分子と分母、非課税は分母だけ、不課税はどちらにも入らない。
  • 輸出免税の適用には、輸出許可書などの証明書類を7年間保存する必要がある。郵便物は20万円を境に必要書類が変わる。
  • 輸入消費税は専用の税区分で登録する。10%は国税7.8%と地方消費税2.2%に分かれ、課税標準はCIF価格に関税等を加えた金額。
  • 免税事業者と簡易課税の会社は、設定を変えても還付は受けられない。
  • 決算では税区分ごとの集計を出し、免税売上高が輸出売上の残高と一致しているかを確認する。
  • ソフトごとの操作画面は変わる。設定の入口は各社のヘルプで最新の手順を確認する。

輸出売上の税区分が正しく設定されているか確認したい場合

当事務所では、貿易取引を行う会社の消費税区分の点検と、過去分にさかのぼった見直しをご相談いただけます。消費税還付のご相談はこちら

よくある質問

会計ソフトの初期設定のままだと、輸出売上はどうなりますか?

国内の課税売上10%として集計されます。売上高の勘定科目には、あらかじめ「課税売上10%」が結びついているためです。免税であるべき売上に10%が当たるので、納める消費税が過大になります。輸出売上が1,000万円あれば、そこに含まれるとされる消費税は約90万9千円で、本来は0円です。

免税・不課税・非課税は、どう違いますか?

課税売上割合での扱いが違います。輸出免税は分子と分母の両方に入り、対応する仕入の消費税を控除できます。非課税は分母だけに入り、対応する仕入は原則として控除できません。不課税(国外取引など)は分子・分母のどちらにも入りませんが、国内で払った経費の消費税は控除できます。

輸出売上を「対象外」で処理していると、何が起きますか?

納税額はいったん合いますが、課税売上割合の分子と分母の両方から抜けます。非課税売上がある会社では課税売上割合が下がり、控除できる仕入税額が減ります。課税売上割合95%以上かつ課税売上高5億円以下という全額控除の条件を外れると、割合の1%が控除額に直接効いてきます。

税区分を輸出免税にすれば、それだけで免税になりますか?

なりません。輸出免税の適用を受けるには、その取引が輸出取引等であることの証明が必要です。輸出の許可を受ける貨物なら輸出許可書、20万円以下の小包郵便物・EMSなら日本郵便の引受けを証する書類と発送伝票等の控えを、納税地等に7年間保存します。非居住者への役務提供などは契約書その他の書類です。

輸入取引にも専用の税区分が必要ですか?

必要です。輸入消費税は国税7.8%と地方消費税2.2%に分かれ、課税標準もCIF価格に関税と個別消費税を加えた金額で、仕入代金に10%を掛けた金額ではありません。控除の要件も、適格請求書ではなく帳簿と輸入許可通知書等の保存です。海外の仕入先への商品代金は不課税、税関へ納める消費税は輸入の税区分、という2本立てにします。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。