国際税務情報
TAX CONTENT
【税理士が解説】輸出売上の計上基準5選|追徴課税と資金繰り悪化を避ける正しい選択
この記事の要点3行でわかる結論
- 輸出売上をいつ計上するかは、法人税基本通達2-1-2が示す「引渡しの日として合理的であると認められる日」から会社が選びます。出荷日・船積日など複数の候補があり、選び方で当期の利益と納税額が変わります。
- 通達が例示しているのは、出荷した日・船積みをした日・相手方に着荷した日・相手方が検収した日・相手方において使用収益ができることとなった日です。実務で使われる通関日基準や船荷証券作成日基準は、この例示には含まれていません。
- どの基準を選ぶかより、選んだ基準を毎期続けることのほうが重要です。継続適用は通達が明記した要件で、期ごとに基準が動いていると税務調査で必ず問題になります。
輸出取引を始めた会社から最も多く受ける質問のひとつが、「売上はいつ計上すればよいのか」です。国内販売なら納品書の日付で迷うことはありませんが、輸出は出荷から相手方に届くまでに1か月以上かかることも珍しくなく、その間に決算日をまたぎます。3月決算の会社が3月30日に出荷した商品が5月に相手国へ届く。この売上は2027年3月期なのか、2028年3月期なのか。ここが定まっていないと、決算のたびに判断がぶれます。
この記事では、輸出売上の計上時期を決めている通達の文言をまず確認したうえで、実務で使われる5つの基準を並べ、自社に合うものをどう選ぶかを説明します。間違えたときに税務調査で何が起きるかは、別の記事にまとめています。
1. 輸出売上はいつの日に計上するのか
仕訳そのものは、国内販売でも輸出でも変わりません。売掛金を立てて、売上を計上するだけです。国内と違うのは「いくらの円で計上するか」と「いつ計上するか」の2点で、この記事は後者を扱います。前者は別の記事で説明しています。
商品の販売による収益は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金に算入します。では「引渡しがあった日」とはいつか。これを定めているのが法人税基本通達2-1-2です。次の日が例示されています。
- 出荷した日
- 船積みをした日
- 相手方に着荷した日
- 相手方が検収した日
- 相手方において使用収益ができることとなった日
そのうえで通達は、これらのように「当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日による」と定めています。読み取るべき条件は2つです。ひとつはその取引の実態に照らして合理的な日であること、もうひとつはその日を継続して使い続けることです。
2. 輸出で使われる計上基準は、どの時点を指すのか
貿易の実務では、次の5つが計上基準として挙げられます。輸出貨物が動く順に並べると、それぞれがどの時点を指しているかがはっきりします。
①出荷基準
自社の倉庫や工場から商品を出した日に売上を計上します。通達が例示している「出荷した日」そのものです。国内販売と同じ処理でよいため事務は最も簡単ですが、5つのなかで最も早く売上が立ちます。まだ船にも積んでおらず、相手国にも届いていない段階で利益を確定させ、法人税を先に納めることになります。
②通関日基準
輸出通関の手続が終わり、税関から輸出の許可を受けた日に計上します。日付は輸出許可通知書の「許可年月日」で確認できます。書類に印字された日付で一意に決まるため、経理としては扱いやすい基準です。ただし、通達が例示している5つには含まれていません。「引渡しの日として合理的であると認められる日」に当たるかどうかを、自社の取引実態から説明できるようにしておく必要があります。
③船積日基準
貨物を船(または航空機)に積み込んだ日に計上します。通達が「船積みをした日」として例示している基準で、貿易の実務で最も広く使われています。FOB・CFR・CIFといった代表的な貿易条件では、危険負担が船積みの時点で売主から買主へ移ります。商品に対する支配が日本を離れる日と、売上を立てる日が一致するため、説明のつきやすい基準です。
④船荷証券等作成日基準
船荷証券(Bill of Lading、略してB/L)の作成日に計上します。船荷証券は、船会社が輸出者の貨物を受け取ったことを証明する受取証です。貸借対照表のB/Sとは別物です。B/Lの日付は船積みの日と一致するか近接することが多く、実務上は船積日基準に近い結果になります。
ただし注意点があります。船荷証券を荷為替手形に添付して銀行に持ち込んだ日を引渡しの日とする「船荷証券引渡基準(荷為替取組日基準)」については、国税不服審判所が、貿易慣習における所有権および危険負担の移転時期に合致せず、引渡しの時期を比較的自由に決められる余地があるため公正妥当な会計処理の基準として相当とはいえないと判断した裁決があります(昭和61年12月8日裁決)。同じ「船荷証券」でも、作成日を使うのか、銀行に渡した日を使うのかで意味がまったく違います。
国税不服審判所公表裁決事例(通常の商品販売)
⑤揚地条件受渡日基準
相手国の港で貨物を陸揚げした日に計上します。5つのなかで最も遅く売上が立つため、税金だけを見れば有利です。ただし、いつ陸揚げされたかを自社で把握し続ける必要があり、事務負担は最も重くなります。また、FOB・CIF・CFRのように船積みで危険負担が移る条件では、陸揚げまで引渡しがなかったと説明することが難しくなります。据付や試運転を伴う機械のように、相手国に着いてからでなければ引渡しが完了しない商流でこそ検討する基準です。
なお、通達が例示している「相手方が検収した日」「相手方において使用収益ができることとなった日」は、この⑤よりさらに後の時点です。相手方の検収報告書を毎回入手できる商流であれば、検収基準も選択肢になります。
3. 基準の違いで、納税はどれだけずれるか
数字で見てみます。3月決算の会社が、3月30日に商品を出荷し、4月3日に船積みと船荷証券の作成、5月5日に相手国で陸揚げされたとします。売上1,000万円、原価300万円です。
①出荷基準なら、この売上は2027年3月期に入ります。法人税等の実効税率を30%と仮定すれば約210万円を、決算日から2か月後の2027年5月末までに納めることになります。⑤揚地条件受渡日基準なら翌期の売上になり、同じ税額の納期限は2028年5月末です。丸1年ずれます。
ここで見落とされやすいのが資金繰りです。①出荷基準では、船に積む前の段階で利益を確定させます。信用状(L/C)のない取引で、代金の回収が船積みの数か月後になる契約であれば、まだ1円も入っていない売上に対する法人税を先に納めることになります。輸出比率の高い会社ほど、この差は無視できません。
あわせて読みたい
やました君
ただし、資金繰りが楽になるからという理由だけで最も遅い基準を選ぶのはおすすめしません。陸揚げ日を毎回追いかける体制がなければ、翌年には結局あいまいな処理に戻ります。続けられる基準を選ぶことが、結果的に一番安全です。
4. 自社に合う基準は、どう選べばよいか
どれが正解と決まっているわけではありません。次の3つの順で考えると、判断がぶれにくくなります。
- その日付が、書類で一意に決まるか。輸出許可通知書の許可年月日、船荷証券の日付のように、第三者が作った書類に印字されている日付であれば、担当者が代わっても処理が変わりません。
- 所有権と危険負担がいつ移る契約か。FOB・CFR・CIFであれば船積みの時点です。契約書やインボイスに記載された貿易条件と、選んだ基準が矛盾していないかを確認します。
- 毎期、全取引で続けられるか。取引先が増えても、担当者が代わっても運用できるか。ここが崩れると、継続適用という通達の要件を満たせなくなります。
多くの中小企業では、この3つを満たすのが③船積日基準か②通関日基準です。まず船積日基準を軸に検討し、船積日の把握が難しい商流であれば通関日基準を検討する、という順が実務的です。
5. 決めたら社内ルールとして文書に残す
基準を決めたら、口頭の申し送りではなく文書にします。税務調査で最初に確認されるのは「御社は何基準ですか」という質問と、その基準どおりに処理されているかの突合です。次の3点を経理規程や業務マニュアルに書いておいてください。
- 採用する基準の名称と、根拠にする書類(例:船積日基準。船荷証券またはShipping Adviceの日付による)
- 決算期をまたぐ取引の締め切り手順(例:決算日から前後1か月の輸出案件は、書類の日付を一覧にして照合する)
- 例外を認める場合の判断者(例外を現場判断で作らない)
あわせて、根拠になる書類の保存も必要です。法人の帳簿書類は原則として7年間の保存が求められます。また、輸出売上を消費税で免税とするには、輸出許可書などの証明書類を保存していることが要件です。売上計上の根拠と輸出免税の証明は、同じ書類でまかなえることが多いので、案件ごとにひとまとめにして保管するのが効率的です。
6. 消費税の計上時期も、あわせて確認する
消費税にも同じ論点があります。消費税法基本通達9-1-1は「棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とする」と定め、続く9-1-2が引渡しの日の判定を示しています。9-1-2が例示しているのは、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日で、法人税の通達と少し顔ぶれが違います。ただし「合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日による」という枠組みは同じです。
実務では、法人税と消費税で違う日を使う理由はありません。同じ日で処理し、輸出免税の売上高も同じ期に計上します。輸出売上が多い会社は消費税が還付になることが多く、計上時期がずれると還付額の帰属期もずれます。
あわせて読みたい
証明書類については、この数年で要件が動いています。2021年10月以後、1個20万円以下の郵便物による輸出は、帳簿の記載だけでは足りず、日本郵便の引受けを証する書類と発送伝票の控えの保存が必要になりました。さらに2026年10月1日以後は、代金を現金等で受け取った輸出取引について、輸入国側の輸入許可書等の保存が加わります。越境ECや小口輸出を行っている会社は、売上計上のルールと同時に、決済方法と証明書類の保存方法も点検してください。
あわせて読みたい
7. まとめ
- 輸出売上の計上時期は、法人税基本通達2-1-2の「引渡しの日として合理的であると認められる日」から会社が選ぶ。出荷した日・船積みをした日・相手方に着荷した日・相手方が検収した日・相手方において使用収益ができることとなった日が例示されている。
- 実務で挙げられる5基準のうち、通関日基準と船荷証券等作成日基準は通達の例示にない。取引実態から合理的だと説明できることが前提になる。
- 船荷証券を銀行に持ち込んだ日を使う「船荷証券引渡基準」は、公正妥当な会計処理の基準とはいえないとした裁決がある。
- 基準の違いで、同じ取引の納税が1年ずれることがある。ただし選ぶ順序は「税金の有利不利」ではなく「書類で決まるか・契約と合っているか・続けられるか」。
- 決めた基準は文書化し、継続適用する。根拠書類は輸出免税の証明書類とあわせて案件ごとに保存する。
輸出売上の計上基準が社内で定まっていない、または過去の処理に不安がある場合
当事務所では、貿易取引の売上計上ルールの整備から、輸出取引の消費税還付までを通して支援しています。過去分の見直しにも対応しています。消費税還付・輸出取引のご相談はこちら
よくある質問
輸出売上はいつの日に計上しますか?
出荷した日・船積みをした日・相手方に着荷した日・相手方が検収した日・相手方において使用収益ができることとなった日のうち、取引の実態に照らして合理的な日を選び、継続して使います。法人税基本通達2-1-2が定める判定で、貿易の実務では船積日基準が最も広く使われています。
通関日基準(輸出許可日)で売上を計上してもよいですか?
実務で使われていますが、通関日基準は法人税基本通達2-1-2の例示に含まれていません。輸出許可通知書の許可年月日で日付が一意に決まる利点はあるものの、「引渡しの日として合理的であると認められる日」に当たることを、自社の取引実態から説明できるようにしておく必要があります。
計上基準の違いで、納税額はどれだけ変わりますか?
決算期をまたぐ取引では、納期限が丸1年ずれることがあります。3月決算の会社が3月30日に出荷し、4月3日に船積み、5月5日に相手国で陸揚げされた売上1,000万円・原価300万円の取引なら、出荷基準では当期、揚地条件受渡日基準では翌期の売上です。実効税率を30%と仮定した約210万円の納期限が1年変わります。
船荷証券を銀行に持ち込んだ日を計上日にしてもよいですか?
避けてください。国税不服審判所は、船荷証券を荷為替手形に添付して銀行に持ち込んだ日を引渡しの日とする基準について、貿易慣習における所有権および危険負担の移転時期に合致せず、公正妥当な会計処理の基準として相当とはいえないと判断しています(昭和61年12月8日裁決)。船荷証券の作成日を使う基準とは別物です。
消費税の売上計上時期も、法人税と同じ日でよいですか?
同じ日にそろえてください。消費税法基本通達9-1-1・9-1-2も「合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日による」という同じ枠組みです。輸出売上が多い会社は消費税が還付になることが多く、計上時期がずれると還付額の帰属期もずれます。
動画でも解説しています海外ビジネスの税金チャンネル
【輸出業・越境EC必見】消費税還付を最短1ヶ月で受ける裏ワザ!資金繰りを爆速改善して売上を上げる方法海外ビジネスの税金チャンネル
<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。





