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輸入仕入(貿易)の仕訳は、いつの日にするのか?

この記事の要点3行でわかる結論

  • 輸入した商品の仕入をいつ計上するか、法人税には「この日にしなさい」と定めた通達がありません。棚卸資産の引渡しを受けた日として合理的と認められる日のうち、会社が継続して使う日によることになります。
  • 消費税は違います。輸入した貨物の消費税を控除するのは「輸入の許可を受けた日」の属する課税期間と、消費税法基本通達11-3-9で明文化されています。法人税の仕入計上日とずれることがあります。
  • 中小企業には、貨物を引き取った日で計上する引取日基準が管理しやすい方法です。ただし決算日をまたぐときは、まだ入庫していない貨物の扱いを必ず確認してください。在庫の計上漏れは税務調査で指摘されやすい項目です。

海外から商品や原材料を輸入すると、経理でまず迷うのが「いつの日付で仕入を立てるのか」という点です。船積みの通知が届く日、船荷証券を受け取る日、通関が終わる日、実際に倉庫へ入る日と、候補になる日付がいくつも並びます。

国内の仕入なら納品書の日付で済むところが、輸入では1か月近く開くことも珍しくありません。決算日をまたぐと、その差がそのまま利益と納税額に効いてきます。

この記事では、輸入仕入の計上日について、法人税と消費税で扱いが違うという点を軸に整理します。結論から言うと、法人税は会社が決めて継続適用するもの、消費税は輸入の許可を受けた日で決まるものです。

1. 輸入仕入の計上日には、いくつもの候補がある

実務で使われている計上基準には、次のようなものがあります。

基準いつ計上するか根拠になる書類
船積通知入手日基準売主から船積みの通知(シッピングアドバイス)を受け取った日船積通知書
船荷証券入手日基準船荷証券(B/L)を受け取った日船荷証券
通関日基準輸入の許可を受けた日輸入許可通知書
引取日基準保税地域から貨物を引き取った日、または自社に到着した日受領書・入庫記録
検収日基準数量や品質を検査して受け入れた日検収書

貿易条件を定めたインコタームズ(FOB、CIFなど)は、運賃や保険料をどちらが負担するか、危険がいつ移転するかを決めるものです。引渡しの日を判断するときの材料にはなりますが、日本の税務上の計上基準を直接決めるものではありません。

2. 法人税には「この日」と決めた通達がない

ここが、この論点でいちばん誤解されているところです。法人税基本通達には、仕入の計上日を直接定めた通達がありません。「輸入仕入は通関日で計上する」と書かれた通達を探しても、見つかりません。

手がかりになるのは、売る側のルールです。棚卸資産の販売による収益は、その引渡しがあった日に計上します。そして引渡しの日がいつかについて、法人税基本通達2-1-2は次のように定めています。

棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。(法人税基本通達2-1-2)

国税庁法人税基本通達 第2章 第1節 第1款の2 棚卸資産の販売に係る収益

買う側の仕入は、この裏返しになります。棚卸資産を取得するのは、その引渡しを受けた日です。そして引渡しを受けた日をいつと見るかは、取引の内容に照らして合理的と認められる日のうち、会社が継続して使っている日によることになります。

つまり、5つの基準のどれを選んでも、それが取引の実態に合っていて、毎期同じ基準を使っているのであれば否認される筋合いはありません。逆に、期によって基準を変えたり、案件ごとに使い分けたりしていると、そこを突かれます。

売る側の計上基準については、別の記事で5つの基準を比較しています。

3. 消費税は「輸入の許可を受けた日」と決まっている

法人税とは対照的に、消費税には明文の定めがあります。

国内で仕入れた場合の課税仕入れの時期は、資産を譲り受けた日や役務の提供を受けた日によることとされ、その判定は売上側(第9章)の取扱いに準じます(消費税法基本通達11-3-1)。ここまでは法人税と同じ考え方です。

ところが、海外から引き取った課税貨物についてはこれと別に、引き取った日が具体的に定義されています。

場面控除する課税期間
通常の輸入関税法67条の輸入の許可を受けた日の属する課税期間
関税法73条1項の承認を受けて、許可前に引き取った場合実際に引き取った日の属する課税期間
特例申告書を提出した場合その特例申告書を提出した日の属する課税期間

国税庁消費税法基本通達 第11章 第3節 課税仕入れ等の時期(11-3-1・11-3-9・11-3-10)

許可前に引き取った場合、納める消費税額はいったん見積りで計上します。その後に金額が確定したときは、確定した日の属する課税期間で差額を加算または減算します(消費税法基本通達11-3-10)。さかのぼって直すのではありません。

輸入は「船積み・通関・入庫」で日付が3つある法人税の仕入計上日は、この中から継続適用で選ぶ輸入消費税の控除は許可日の課税期間船積み2027年2月20日/B/L発行輸入の許可(通関)2027年3月10日貨物を引き取り入庫2027年3月12日決算日2027年3月31日
法人税は会社が決めた合理的な日、消費税は輸入の許可を受けた日。この2つは同じ日とはかぎりません

この結果、引取日基準を採っている会社では、法人税の仕入計上日(入庫日)と消費税の控除時期(許可日)がずれます。ずれること自体は誤りではありません。根拠になっているルールが別だからです。ただし決算日をまたいだときは説明を求められますので、輸入案件ごとに許可日と入庫日を並べた一覧を作っておいてください。

国税庁No.6563 輸入取引

4. 輸入仕入の金額は、どう組み立てるか

輸入では、支払先が2つに分かれます。商品代金は海外の売主へ、関税と輸入消費税は税関(実務では通関業者を通して)へ支払います。

輸入消費税の課税標準は、国内取引と計算方法が違います。CIF価格(商品代金+運賃+保険料)に関税と個別消費税を加えた金額が課税標準になり、そこに10%を掛けます。

輸入消費税は「CIF価格+関税」に10%を掛けて計算するCIF価格 10,000ドル × 150円1,500,000円関税(税率5%と仮定)75,000円輸入消費税の課税標準 = CIF価格 + 関税1,575,000円輸入消費税 = 1,575,000円 × 10%157,500円
内訳は消費税7.8%と地方消費税2.2%です。実際の金額は輸入許可通知書に記載されたものを使います

国税庁No.6563 輸入取引

国税庁No.6303 消費税及び地方消費税の税率

税関カスタムスアンサー 1111 関税、消費税等の税額計算方法

円換算のレートは、仕入を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)が原則です。継続適用を条件に、仕入その他の費用は電信売相場(TTS)を使うこともできます。前月末や前月平均といった簡便な相場も認められています。

国税庁法人税基本通達 第13章の2 第1節 外貨建取引に係る会計処理等(13の2-1-2)

5. 仕訳で追う

3月決算の法人が、次の輸入を行ったものとします。引取日基準を継続して採用しています。

  • 2027年2月20日 船積み(B/L発行)
  • 2027年3月10日 輸入の許可。関税75,000円・輸入消費税157,500円を通関業者が立替払い
  • 2027年3月12日 保税地域から貨物を引き取り、自社倉庫へ入庫(TTM 150円)
  • 2027年3月25日 通関業者へ関税・消費税・通関手数料を支払
  • 2027年4月20日 海外の売主へ10,000ドルを送金(TTM 154円)

3月12日 貨物を引き取ったとき(仕入を計上)

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
仕入1,575,000円買掛金1,500,000円2027/3/12 CIF 10,000ドル × 150円。海外の売主への支払は消費税の対象外
仮払消費税等157,500円未払金232,500円関税75,000円 + 輸入消費税157,500円(通関業者の立替分)

仕入の1,575,000円には関税75,000円が入っています。関税は仕入原価に含めて処理し、消費税の計算では対象外(不課税)として扱います。仮払消費税等157,500円だけを、輸入した貨物にかかる消費税として入力してください。

3月25日 通関業者へ支払ったとき

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
未払金232,500円普通預金232,500円2027/3/25 立替分の精算。通関手数料は別途、課税仕入れとして計上

4月20日 海外の売主へ送金したとき

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
買掛金1,500,000円普通預金1,540,000円2027/4/20 10,000ドル × 154円
為替差損40,000円10,000ドル ×(154円 − 150円)。消費税は対象外

買掛金は計上したときの帳簿価額1,500,000円のまま落とし、差額の40,000円を為替差損にします。仕入の金額をさかのぼって直すことはしません。決算日をまたいで買掛金が残っている場合は、期末のレートで換算し直す必要があります。

先に代金を送金している場合は、前渡金の扱いになります。前渡金は期末に換算し直しませんし、仕入に振り替えるときも帳簿価額をそのまま使います。


やました君

会計ソフトに入力するときは、仕入の税区分に気をつけてください。海外の売主へ払う商品代金は消費税の対象外、税関へ払う輸入消費税だけが控除の対象です。この2つを1本の仕訳にまとめると、税区分が混ざって控除額が合わなくなります。輸入の仕訳は、必ず本体と消費税を分けて入力してください。

6. 決算日をまたぐと、在庫の計上漏れが起きる

税務調査でこの論点が持ち出されるのは、たいてい決算日をまたぐ案件です。

たとえば通関日基準を採っている会社で、3月10日に輸入の許可を受け、貨物が自社に届いたのが4月5日だったとします。3月10日に仕入を計上していますから、決算日の3月31日時点でその商品は費用になっています。ところが現物は手元にありません。この場合、未着品などの棚卸資産として在庫に計上する必要があります。

ここを忘れると、在庫の計上漏れになります。指摘されれば、漏れた在庫の金額に法人税率を掛けた分の追徴です。2年で見れば納める税額は変わりませんが、過少申告加算税と延滞税は戻ってきません。

引取日基準を採っていれば、この問題は起きにくくなります。貨物を引き取っていない以上、仕入も計上していないためです。帳簿に何も載っていなければ、在庫に計上し忘れることもありません。中小企業に引取日基準をおすすめするのは、この分かりやすさが理由です。

ただし、引取日基準でも決算前後の確認は必要です。

  • 契約条件によっては、期末時点ですでに自社の商品になっているものがあります。決算では、船積みが済んで未入庫の貨物を一覧にし、自社の在庫に含めるべきものがないかを確認してください。
  • 期末までに輸入の許可を受けていれば、消費税はその課税期間で控除できます。入庫が翌期であっても、消費税の控除は許可日の課税期間です。法人税の仕入計上と時期がずれますので、輸入許可通知書と入庫記録を案件ごとにひもづけて保存しておきます。

7. 自社はどの基準を選べばよいか

選び方の目安は、輸入の件数と管理の体制です。

会社の状況向いている基準理由
輸入の件数が少なく、経理担当者が1人引取日基準現物が届いた日で計上するため、在庫との突合が簡単。未着品の計上漏れが起きにくい
件数が多く、輸入書類で案件を管理している通関日基準輸入許可通知書の日付で統一でき、消費税の控除時期とも一致するため、突合が楽になる
船積みの時点で自社の在庫として管理している船荷証券入手日基準危険負担の移転と帳簿が一致する。ただし未着品の管理が必須

どれを選んでも、大切なのは次の2つです。

  1. 毎期同じ基準を使う。合理的と認められる日のうち、継続して計上している日によることが求められています。有利な期だけ基準を変えることはできません。
  2. 経理規程やマニュアルに書き残す。担当者が代わっても同じ処理が続くようにしておきます。税務調査で「いつからこの基準ですか」と聞かれたときに、文書で示せる状態にしておいてください。

8. まとめ

  • 法人税には、輸入仕入の計上日を直接定めた通達がない。棚卸資産の引渡しを受けた日として合理的と認められる日のうち、継続して使っている日による。
  • 消費税は明文がある。輸入した貨物の消費税を控除するのは、関税法67条の輸入の許可を受けた日の属する課税期間(消費税法基本通達11-3-9)。
  • 許可前に引き取った場合は実際に引き取った日、特例申告書を提出した場合はその提出日の属する課税期間になる。
  • 法人税の仕入計上日と消費税の控除時期がずれること自体は誤りではない。案件ごとに許可日と入庫日をひもづけて記録しておく。
  • 輸入消費税の課税標準はCIF価格+関税+個別消費税。関税は仕入原価に含め、消費税では対象外として扱う。
  • 通関日基準・船積日基準を採る場合、期末に未入庫の貨物は未着品として在庫計上が必要。忘れると在庫の計上漏れになる。
  • 中小企業には引取日基準が管理しやすい。ただし契約条件によっては期末に自社の在庫となるものがあるため、未入庫分の一覧は毎期作る。
  • 選んだ基準は毎期続け、経理規程に書き残す。

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よくある質問

輸入した商品の仕入は、いつの日に計上しますか?

法人税には仕入の計上日を直接定めた通達がありません。棚卸資産の引渡しを受けた日として合理的と認められる日のうち、会社が継続して使っている日によることになります。船積通知入手日・船荷証券入手日・通関日・引取日・検収日のどれを選んでも、取引の実態に合っていて毎期同じであれば問題ありません。

輸入した貨物の消費税は、いつの課税期間で控除しますか?

原則として、関税法67条の輸入の許可を受けた日の属する課税期間です(消費税法基本通達11-3-9)。関税法73条1項の承認を受けて許可前に引き取った場合は実際に引き取った日、特例申告書を提出した場合はその提出日の属する課税期間になります。

法人税の仕入計上日と消費税の控除時期がずれてもよいですか?

ずれること自体は誤りではありません。法人税は会社が決めた合理的な日、消費税は輸入の許可を受けた日と、根拠になるルールが別だからです。ただし決算日をまたぐと説明を求められるので、輸入案件ごとに許可日と入庫日を並べた一覧を作り、輸入許可通知書と入庫記録をひもづけて保存してください。

通関日基準を採ると、期末に何を確認すればよいですか?

輸入の許可を受けたが期末までに入庫していない貨物を、未着品などの棚卸資産として在庫に計上する必要があります。許可日に仕入を計上すると費用は落ちているのに現物が手元にないため、ここを忘れると在庫の計上漏れになります。指摘されれば本税は2年で通算されますが、過少申告加算税と延滞税は戻りません。

中小企業には、どの基準が向いていますか?

輸入の件数が少なく経理担当者が1人の会社には、現物が届いた日で計上する引取日基準が管理しやすい方法です。帳簿に載っていない以上、未着品の計上漏れが起きにくいためです。件数が多く輸入書類で案件を管理している会社は、消費税の控除時期と一致する通関日基準のほうが突合が楽になります。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。