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【令和7年度 査察】輸出入の会社が消費税の還付で告発された手口|国税庁の公表事例から

この記事の要点3行でわかる結論

  • 令和7年度に国税庁が検察庁へ告発したのは82件、脱税総額は84億円。うち消費税の不正還付は12件でした。
  • 告発された手口は「架空の課税仕入れを作る」か「架空の輸出免税売上げを作る」のどちらかです。輸出入の会社は、その両方を作れる立場にあります。
  • 前年度には、実際には輸出していないのに輸出免税制度を悪用して還付を受けた人に、懲役2年6月の実刑判決が出ています。

国税庁が令和8年6月に「令和7年度 査察の概要」を公表しました。悪質な脱税者を検察庁に告発した1年分の記録です。

そのなかで、輸出入をしている会社が消費税の還付で告発された事例がいくつも挙がっています。手口はどれも似ていて、そして共通して「仕入側」で作られています。

この記事では、国税庁が公表した事例をもとに、何が告発されたのか、まっとうに還付を受けている会社が何に気をつければよいのかを整理します。

1. 令和7年度の査察は82件・84億円

着手件数131件
処理件数127件
告発件数82件(告発率 64.6%)
脱税総額(告発分)84億円
1件当たりの脱税額1億200万円

件数は前年(98件)より減りましたが、1件当たりの脱税額は1億200万円と、過去5年でいちばん大きくなっています。件数を追うより、悪質で金額の大きいものに絞っている、という形が数字に出ています。

税目別の告発件数は次のとおりです。

税目令和5年度令和6年度令和7年度
法人税594844
消費税272923
所得税141613
相続税122
合計1019882

単位は件。消費税の告発件数には、不正受還付事案が含まれます。

国税庁令和7年度 査察の概要(令和8年6月)

2. 消費税の不正還付は12件・73百万円

消費税の告発23件のうち、不正受還付として告発されたのが12件です。金額の推移を見ておきます。

令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度令和7年度
告発件数916161712
不正受還付額4341,34745430473

単位は件・百万円。不正受還付額は加算税を除き、未遂の還付額を含みます。

数字が減ったことを「見られなくなった」と読まないでください

告発は、調査でつかまえきれなかったものが刑事事件まで進んだ結果です。手前の段階では、令和6事務年度に消費税還付申告法人への実地調査が4,802件、追徴税額は299億円に上っています。

金額が小さいうちに調査で止まっている、と読むほうが実態に近いはずです。入口はむしろ広がっています。

3. なぜ「仕入側」ばかりなのか

輸出をしている会社の消費税は、こういう形になります。

不正還付は、ほぼ「仕入側」で作られる消費税の還付額売上の消費税輸出免税なら 0円仕入の消費税ここを膨らませると還付が増える
輸出売上が本物でも、仕入を過大に計上すれば還付額は膨らみます。税務署が仕入の証憑を細かく見るのはこのためです。

輸出免税なので、売上にかかる消費税はゼロです。一方で、仕入や経費で払った消費税は控除できます。差引がマイナスになった分が還付されます。

ということは、還付額を膨らませたければ、仕入側をいじるのがいちばん手っ取り早いということです。実際、令和7年度に告発された事例も、そのほとんどが仕入側でした。

裏を返せば、税務署が還付申告で真っ先に見るのも仕入側です。正しく還付を受けている会社が請求書や契約書を細かく聞かれるのは、このためです。

4. 令和7年度に告発された事例

再生資源の輸出会社|輸入した機械装置を、国内で買ったことにした

国税庁の公表内容はこうです。

廃プラスチック等の再生資源を輸出する会社が、内容虚偽の見積書等を作成し、過去に海外から輸入した事業用の機械装置を国内事業者から過大な金額で取得したように装い、課税仕入れを過大に計上することで、不正に消費税の還付を受けた。

令和7年度の告発事例:再生資源の輸出会社海外日本仕入先調査法人過去に機械装置を輸入このときは輸入消費税を納付している国内業者から高く買ったことにする内容虚偽の見積書で課税仕入れを過大計上
実在する機械装置を使いながら、取得の経路と金額を作り替えた事案です。国税庁が公表した内容に基づいています。

ここで注目したいのは、機械装置そのものは実在しているという点です。架空の資産をでっち上げたのではなく、取得の経路と金額を作り替えた事案です。

海外から輸入した時点では、輸入消費税を納めています。それを「国内の業者から高く買った」ことにすれば、国内取引の課税仕入れとして控除額を水増しできます。

中古の機械装置や設備は、相場の幅が広く、値付けの根拠が曖昧になりがちです。だからこそ狙われますし、だからこそまっとうな取引でも、金額の根拠を残しておく必要があるということでもあります。

産業廃棄物処理・運送業|実在しない資産を取得したことにした

産業廃棄物処理及び運送業を行う会社が、不正加担者に内容虚偽の見積書や請求書を作成させ、実在しない資産を取得したように装い、課税仕入れを過大に計上することで、消費税の中間納付に係る還付を受けるとともに、納めるべき消費税を免れていた。

中間納付の還付という点が特徴です。確定申告での還付だけでなく、中間納付した分を取り戻す形も対象になります。

海外を使った事例

消費税以外でも、海外を経由した事例が並んでいます。

日用品等の輸入販売会社海外の不正加担者と通謀して、海外法人に対する架空の輸入仕入れを計上し、法人税を免れていた
営業コンサルタントの
グループ会社
各社で架空の仕入れ等を計上し、得た不正資金の一部を海外預金として秘匿する方法で法人税や消費税を免れていた
防災システムの
開発・保守会社
海外法人に対する架空の仕入れを計上し、得た不正資金を海外預金として秘匿する方法で法人税を免れていた

「海外法人への支払い」は、相手が海外にいるぶん、こちらの帳簿だけでは実在性を確かめにくい取引です。ただし国税庁は租税条約等に基づく情報交換制度を使って相手国の税務当局に照会しています。国内で完結する話ではありません。

国税庁令和7年度 査察の概要 2 令和7年度の査察事績

5. 前年度も、輸出免税の偽装が告発されている

令和6年度(前年)の告発事例も見ておきます。

高級腕時計を海外へ輸出販売したように偽装するため、インターネット等で購入した安価な腕時計を用意し高価な腕時計を購入したとする領収証や輸出関係書類を作成して、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上げを計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした。

こちらは仕入と売上の両方を作った事案です。安い時計を実際に輸出して、書類の上では高級時計にする。現物は動いているので、書類だけを見ていると気づきにくい形です。

同じ年度には、不動産賃貸業のグループ法人7社が、居住用賃貸建物の仕入税額控除を通すために架空の金地金取引で課税売上割合を偽装した事案も告発されています。

6. 判決は実刑になっています

令和6年度中の一審判決は99件、すべて有罪で、13人に実刑判決が出ました。そのうち消費税法違反を含むものが7人です。

輸出免税制度の悪用で懲役2年6月

国税庁の公表内容そのままです。

「実際には輸出業務を行っていないにもかかわらず、輸出免税制度を悪用し、架空の輸出免税売上げ及び架空の課税仕入れを計上することで、不正に消費税の還付を受けた者に懲役2年6月の実刑判決が出された。」

令和7年度中の一審判決は80件で、こちらもすべて有罪。6人に実刑が出ています。査察事件単独でいちばん重かったのは、脱税指南グループの首謀者に対する懲役6年でした。

消費税の不正還付が「国庫金の詐取ともいえる」と表現されるのは、納めていない税金を国から受け取る行為だからです。他の脱税より重く扱われます。

国税庁令和6年度 査察の概要(令和7年6月)

7. 告発は氷山の一角|通常の調査では299億円

ここまでは刑事事件になった話です。実際には、その手前の税務調査で終わっているものが圧倒的に多くあります。

消費税還付申告法人への実地調査(令和6事務年度)
実地調査件数4,802件
非違があった件数2,916件(約6割)
うち不正計算があった件数769件
追徴税額299億円(うち不正計算分 51億円)
調査1件当たりの追徴税額622万円

調査に入られた還付申告法人の約6割で、何らかの非違が見つかっています。不正計算があったのはそのうち769件ですから、残りは「不正ではないが間違っていた」ものです。

通関業者から税務署へ情報が行った事例

同じ令和6事務年度の調査事例に、こういうものがあります。

通関業者が、輸出貨物の中身が通関書類と違うことに気づきました。書類上は指輪ですが、実際に入っていたのはゴミです。通関業者はこの事実を税務署に情報提供し、調査で架空仕入れが把握されました。追徴税額は消費税で約4千万円です。

輸出免税は、書類が揃っていれば通る制度ではありません。現物が動いているかを、税務署は外からも確認できます。

国税庁令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和7年12月)

8. まっとうな輸出企業が気をつけること

ここまでの事例は、どれも意図的な不正です。ただし、税務署がどこを見るかは、不正であってもなくても同じです。

確認すること
1仕入側の証憑 不正は仕入側で作られるため、税務署も仕入側を見ます。請求書・契約書・入出金の3つがつながるようにしておきます
2輸出の実在性 通関書類と、実際に何をいくつ送ったかが一致しているか。運送会社の記録も残します
3金額の根拠 中古品・機械装置・美術品など相場の幅が広いものは、なぜその値段なのかを説明できるようにしておきます
4仕入先の実在性 初めての相手、紹介だけの相手、事務所の実態が確認できない相手からの高額仕入れは、あとで説明を求められます
5課税売上割合 金地金など、課税売上割合を動かす取引の目的を説明できるようにしておきます

還付は、国からお金を受け取る手続きです。納税より厳しく見られるのは当然、と考えて準備しておくほうが、結果的に早く還付を受けられます。

9. まとめ

  • 令和7年度の査察は告発82件・脱税総額84億円。1件当たりの脱税額は1億200万円で、過去5年でいちばん大きくなっています。
  • 消費税の不正還付は12件。件数と金額は減っていますが、手前の税務調査では4,802件・299億円が追徴されています。
  • 告発された手口は、ほぼ仕入側で作られています。税務署が還付申告で仕入の証憑を細かく見るのはこのためです。
  • 輸出免税制度を悪用した不正還付には、懲役2年6月の実刑判決が出ています。
  • 通関業者からの情報提供で発覚した例もあります。書類が揃っていれば通る制度ではありません。

正しく還付を受けているのに、調査のたびに不安になる——という会社は少なくありません。何をどこまで残しておけばよいのかは、取引の形によって変わります。判断に迷うところがあれば、無料相談でご一緒に確認します。

動画でも解説しています海外ビジネスの税金チャンネル

【税務調査対策】輸出ビジネスの消費税還付が否認される理由…税理士任せは超危険です海外ビジネスの税金チャンネル

よくある質問

消費税の還付申告をすると、必ず税務署から連絡が来ますか?

必ずではありませんが、還付申告は納税の申告より慎重に見られます。令和6事務年度は消費税還付申告法人に対して4,802件の実地調査が行われ、そのうち約6割で非違が見つかっています。金額が大きい初回の還付や、前期と比べて還付額が急に増えた期は、問い合わせを受ける可能性が高いと考えておいてください。

告発される件数が減っているのは、取締りが緩くなったからですか?

そうではありません。告発は刑事事件として立件されたものだけの数字で、その手前には税務調査があります。令和6事務年度の消費税還付申告法人に対する調査では299億円が追徴されており、うち不正計算に係るものが51億円あります。調査の段階で止まっている、と読むほうが実態に近いはずです。

輸出売上が本物なら、還付を否認されることはありませんか?

あります。還付額は「売上の消費税マイナス仕入の消費税」で決まるため、輸出売上が本物でも、仕入側の金額や証憑に問題があれば否認されます。令和7年度に告発された事例も、輸出そのものは行っている会社が、仕入側で課税仕入れを過大に計上したものでした。

中古の機械や設備を高く買うと、それだけで疑われますか?

金額が高いこと自体が問題になるわけではありません。問題になるのは、その金額の根拠を説明できないときです。中古品は相場の幅が広く、見積書の金額がそのまま通りにくい分野です。相見積り、査定書、同種の取引事例など、なぜその値段なのかを示せる資料を残しておいてください。

海外の会社への支払いは、税務署に確認されないのではありませんか?

確認されます。国税庁は租税条約等に基づく情報交換制度を使い、相手国の税務当局に取引の有無を照会しています。令和7年度には、海外法人に対する架空の仕入れを計上した事案が複数告発されています。国内の帳簿だけで完結する話ではありません。

うっかりの計算誤りでも重加算税になりますか?

仮装や隠ぺいがなければ、重加算税の対象にはなりません。ただし、書類を破棄した、事実と違う書類を作った、といった行為があると隠ぺい・仮装と判断され、重加算税が課されます。令和6事務年度の還付申告法人の調査でも、非違2,916件のうち不正計算があったのは769件で、残りは不正ではない誤りでした。

<注記>この記事は、国税庁が公表した資料に基づいて、税務調査で何が見られているかをご説明するものです。事例の記述は国税庁の公表内容によります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の公表資料に基づいています。