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【令和8年10月】輸出の代金を現金で受け取る取引は、相手国の輸入許可書がないと免税にならない

この記事の要点3行でわかる結論

  • 令和8年10月1日以後、輸出の代金を現金などで受け取る取引は、輸出許可書等に加えて、仕向国における輸入許可書に相当する書類を保存しないと輸出免税を適用できません。
  • 銀行振込や荷為替手形による決済は対象外です。追加の書類が必要になるのは、現金や、支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法で受け取る場合です。
  • これまでと決定的に違うのは、自社では取得できない「相手国側の書類」が要件になった点です。契約と決済方法の設計で先に手を打つ必要があります。

令和8年4月に消費税法等の一部が改正され、輸出免税の要件が見直されました。適用は令和8年10月1日からです。輸出をしている会社にとっては、還付が通るかどうかを左右する改正です。

この記事では、何がどう変わったのか、どの取引が対象になるのか、そして実務で何をしておけばよいのかを、当事務所の視点を交えて整理します。輸出還付の仕組みそのものは、先に次の記事をお読みいただくと理解が早くなります。

1. 何が変わったのか。国税庁は何と書いているか

輸出の代金を現金等で受け取る取引について、保存すべき書類が1種類増えました。国税庁の「消費税法改正のお知らせ」(令和8年4月)には、次のように書かれています。

事業者が輸出として行う資産の譲渡又は貸付けのうち、その輸出取引の代金を現金又は支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法で受領するものについては、現行の輸出免税の適用要件となっている輸出許可書等の保存に加えて、輸出の仕向国における輸入許可書に相当する書類(その電磁的記録を含みます。)を保存しなければならないこととされました。

※ 例えば、銀行振込や荷為替手形による決済などは、支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法で受領するものには該当しません。

根拠は消費税法施行規則第5条の改正で、施行日は令和8年10月1日です。適用されるのは、令和8年10月1日以後に行われる資産の譲渡または貸付けからです。

代金の受け取り方令和8年9月30日まで令和8年10月1日以後
銀行振込(取引相手からのものと分かる)輸出許可書等輸出許可書等(変更なし)
荷為替手形による決済輸出許可書等輸出許可書等(変更なし)
現金輸出許可書等輸出許可書等 + 仕向国の輸入許可書に相当する書類
支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法輸出許可書等輸出許可書等 + 仕向国の輸入許可書に相当する書類

国税庁消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)

2. なぜこの改正が実務上やっかいなのか

これまでの証明書類と、質がまったく違うからです。

今回はじめて「相手側にしか作れない書類」が免税の要件に入った日本仕向国輸出する会社買主(バイヤー)商品を輸出する輸出許可書は自社で税関から取れる代金を現金で受け取るここが今回の改正の対象輸入許可書に相当する書類相手が通関しなければ存在しない
輸出許可書は自社で取れます。仕向国の輸入許可書は、買主が動かなければ手に入りません

輸出許可書は、自社が日本の税関に輸出申告をすれば発行されます。手続きは自社の側で完結します。ところが今回追加された「仕向国における輸入許可書に相当する書類」は、相手国のバイヤーが輸入通関をして、はじめて存在する書類です。自社がどれだけ丁寧に事務をしても、相手が動かなければ手に入りません。

輸出免税の要件に、はじめて「相手が持ってくる書類」が入りました。これが今回の改正でいちばん重い部分です。書類が揃わなければ輸出免税は使えず、その売上に消費税が課されます。還付を前提に資金繰りを組んでいた会社ほど、影響は大きくなります。

還付というのは、国内の仕入で払った消費税を会社がいったん立て替えて、あとから返してもらう仕組みです。書類が1枚足りないだけで、その立替えが固定化します。輸出売上が大きい会社ほど、金額も大きくなります。

3. これは3度目の「帳簿だけではダメ」です

今回の改正は、単独の出来事として見ないほうが実態に近いと考えています。同じ方向の見直しが、ここ数年で3回続いています。

これは3度目の締め付けです「帳簿だけ」「現金だけ」を認めない方向は一貫している郵便(EMS等)の輸出令和3年10月〜特定金属くず特例令和8年9月〜現金取引等の輸出免税令和8年10月〜
いずれも背景にあるのは消費税の不正還付対策です
時期改正内容
令和3年10月郵便物による輸出の証明書類EMS等の少額郵便で、帳簿の記載だけでは足りなくなり、引受けを証する書類と発送伝票の控えの保存が必要に
令和8年9月特定金属くず特例銅を主とする金属くずが古物商特例・再生資源等特例から外れ、金属盗対策法の届出をした事業者だけが帳簿の保存のみで仕入税額控除できることに
令和8年10月現金取引等の輸出免税要件現金等で受け取る輸出取引は、仕向国の輸入許可書に相当する書類の保存が必要に

背景にあるのはいずれも消費税の不正還付対策です。国税庁は、取引をしたように見せかけて虚偽の申告を行い還付を受けようとする事案を重点課題と位置づけています。実際に手口として使われてきたのが、「現金でやりとりしたことにする」「帳簿にだけ書いておく」という形です。国は、この2つを順番に潰しにきています。


やました君

令和3年のEMSの改正のときに「輸出の証明が厳しくなった」と書きましたが、あの流れはまだ続いていました。真面目にやっている会社ほど、事務負担だけが増えていくのは正直つらいところです。ただ、書類が揃わなければ還付は通りません。制度に文句を言うより、先に手を打つほうが早いです。

4. 仕入側と売上側で、同時に締められる業種があります

金属スクラップ、中古車、中古品の輸出です。この3つは、令和8年の9月と10月で、仕入側と売上側の両方が同時に変わります。

  • 仕入側(令和8年9月1日〜) — 銅を主とする金属くずは、金属盗対策法の届出をした事業者だけが帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられます。届出がなければ、免税事業者からの買取分は経過措置の7割控除にとどまります。
  • 売上側(令和8年10月1日〜) — 輸出代金を現金等で受け取っていれば、仕向国の輸入許可書に相当する書類がなければ輸出免税を適用できません。

もともとこれらの業種は、仕入も売上も現金が動きやすい世界です。仕入で控除が減り、売上で免税が外れれば、還付額は両側から削られます。一方だけを見て対策しても足りません。

5. 免税店の海外直送取引も対象です

あまり知られていませんが、輸出物品販売場(免税店)が行う海外直送取引についても、同じ手当てがされています。

省令の改正要旨には、輸出取引の対価を現金等により受領する場合における販売場において行う海外直送取引に係る輸出免税の要件について、運送契約に係る一定の契約書の保存に加えて、仕向国における輸入許可書等に相当する書類の保存を加える、と書かれています。

外国人旅行者に販売した商品をそのまま海外へ送る取引で、代金を現金で受け取っている店舗は少なくありません。免税店を運営している会社は、レジの決済方法と書類の流れを確認しておいてください。

6. どの書類が「輸入許可書に相当する書類」になるのか

仕向国の税関等が輸入の事実を証明した書類です。ただし、現時点で条文とパンフレットから確実に読み取れるのは、次の3点にとどまります。

  • 仕向国における輸入許可書に相当する書類であること
  • 電磁的記録(PDF等の電子データ)でもよいこと
  • 令和8年10月1日以後に行われる資産の譲渡または貸付けから適用されること

国によって通関の制度も書類の名称も違います。自由貿易地域向けのように輸入許可という手続き自体が存在しない場合や、郵便で送る場合の扱いなど、細かい部分は個別の確認が必要です。ここは断定できる段階ではないため、当事務所では、書類の名称にこだわるより「仕向国の税関等が発行し、輸入した事実・年月日・品名・金額・宛先が分かるもの」を揃える方針でご案内しています。

不明な取引がある場合は、そもそも決済方法を銀行振込に寄せて、この要件の対象から外すほうが確実です。

7. いちばん危ないのは「契約は振込、実際は現金」です

判定されるのは契約書の文言ではなく、実際にどう受け取ったかです。

これは、令和3年のEMSの改正のときにも同じことが起きました。輸出許可書が不要になる20万円以下に収めるため、実際は30万円の取引なのに伝票に15万円と書く、という運用が一部にありました。税務調査でその事実が分かれば、20万円以下の郵便物には該当しないため、原則どおり輸出許可書がなければ還付は認められません。金額を小さく書いたことが、そのまま還付否認につながります。

今回も構図は同じです。契約書に銀行振込と書いてあっても、実際に現金で受け取っていれば、仕向国の輸入許可書に相当する書類が必要になります。契約書の体裁を整えるのではなく、実際の入金経路を振込に統一するのが正しい対応です。

8. 令和8年10月までにやっておくこと

順番に進めてください。上にあるものほど効果が大きく、費用もかかりません。

  1. 入金経路の棚卸し — 輸出売上のうち、現金や第三者名義の入金で受け取っている取引を洗い出します。件数と金額を把握するところからです。
  2. 決済方法を銀行振込に寄せる — もっとも確実な対策です。振込であれば、そもそも追加の書類が要りません。少額でも例外を作らないことが大事です。
  3. 現金が残る取引は、契約書・注文書に書類提供を明記する — 「買主は輸入通関後、速やかに輸入許可書に相当する書類の写しを売主に提供する」といった条項を入れます。相手任せにしないための唯一の手段です。
  4. 受領した書類の保存ルールを決める — 電磁的記録でも構いません。取引ごとに、輸出許可書と輸入許可書に相当する書類をひも付けて保存します。消費税の帳簿・書類の保存期間は7年です。
  5. 会計ソフトの設定を見直す — 輸出売上の税区分は間違えやすい部分です。あわせて確認しておきます。

還付申告のときの添付書類も、この機会に整えておくことをおすすめします。「消費税の還付申告に関する明細書」は必須です。任意ですが、勘定科目別の消費税明細書、輸出許可書、輸入許可書を添えておくと、税務署からの問い合わせがほとんどなくなります。輸出が日常的にある会社は、申告用に輸出許可書をPDFでスキャンして別に保存しておくと、資料の提出を求められたときに慌てずに済みます。

9. まとめ

  • 令和8年10月1日以後、輸出代金を現金等で受け取る取引は、輸出許可書等に加えて仕向国の輸入許可書に相当する書類の保存が必要になる。
  • 銀行振込や荷為替手形による決済は対象外。決済方法を振込に寄せれば、この要件から外れる。
  • 今回はじめて、自社では取得できない相手国側の書類が免税の要件に入った。契約書に書類提供を明記しておくこと。
  • 免税店の海外直送取引も同じ手当てがされている。
  • 金属スクラップ・中古車・中古品の輸出は、令和8年9月の仕入側と10月の売上側で同時に締められる。両方を見て対策する。
  • 判定されるのは実際の入金経路。契約書の文言を整えるだけでは意味がない。

輸出で消費税の還付を受けている方へ

当事務所では、輸出売上の入金経路を1件ずつ確認し、令和8年10月1日以後に免税が外れる取引がないかを洗い出しています。契約書の条項案と、書類の保存フローの設計までお手伝いします。消費税還付コンサルティング

よくある質問

銀行振込で代金をもらっている場合も、相手国の輸入許可書が必要になりますか?

必要ありません。国税庁は、銀行振込や荷為替手形による決済などは「支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法」に該当しないとしています。追加の書類が求められるのは、現金で受け取る場合や、支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法で受け取る場合です。

いつの取引から適用されますか?

令和8年10月1日以後に行われる資産の譲渡または貸付けから適用されます。契約日ではなく、譲渡または貸付けが行われた日で判定します。輸出売上の計上時期を通関日で認識しているか船積日で認識しているかによって、境目にある取引の扱いが変わる可能性があります。

代金の一部だけを現金で受け取った場合はどうなりますか?

対価の大部分を現金等以外の方法で受け取るときは、追加の書類の保存は不要とされています。ただし「大部分」の具体的な判定は個別に確認が必要です。手付金だけを現金で受け取り、残額を銀行振込にするといった設計が現実的な対応になります。

相手国の輸入許可書が手に入らなかったら、どうなりますか?

その取引について輸出免税を適用できなくなります。売上に消費税が課され、還付を前提にしていた資金繰りが崩れます。相手任せにせず、契約書や注文書の段階で書類の提供を条件として明記しておくことが、いま打てる最も確実な手です。

免税店が外国人旅行者に販売して海外へ直送する取引も対象ですか?

対象です。省令の改正要旨では、販売場において行う海外直送取引についても、代金を現金等で受け取る場合には、運送契約に係る契約書の保存に加えて、仕向国における輸入許可書等に相当する書類の保存が必要とされています。この点はあまり知られていないため、免税店を運営している会社は確認してください。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があり、指定される書類の具体的な範囲は今後の取扱いで明らかになる部分があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。