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海外渡航(海外視察)費用はどこまで経費にでき、どのように計算するのか?!

この記事の要点3行でわかる結論

  • 海外渡航費が旅費になるかどうかは、その渡航が法人の業務の遂行上必要であり、かつ通常必要と認められる金額であるかで決まります(法人税基本通達9-7-6)。必要と認められない部分は、役員または使用人に対する給与になります。
  • 業務と観光が混ざった旅行は、期間の比等で按分します(法人税基本通達9-7-9)。同業者団体等が行う視察旅行については、平成12年10月11日付の法令解釈通達が、業務従事割合による具体的な計算方法を定めています。この通達は2026年9月時点で国税庁のサイトに掲載されており、廃止の注記はありません。
  • 配偶者や家族を同伴した場合、その旅費は原則として役員に対する給与になります。例外は、身体障害のため補佐人を同伴する場合、国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合、外国語や専門知識を持つ者を同伴する場合の3つです。

海外展開を考えている会社にとって、現地を自分の目で見ることには意味があります。同業者団体や取引先と一緒に、1週間ほどの視察旅行に出かけることもあるでしょう。円安が続く局面では、その費用も以前より大きくなっています。

問題は、その費用がどこまで経費になるかです。海外渡航費は、税務調査でほぼ必ず確認される項目です。理由は単純で、業務と観光の線引きが事実認定の問題だからです。判断が分かれる論点は、調査で見られます。

この記事では、海外渡航費が旅費になるかどうかの判定と、業務と観光が混ざったときの按分計算を、通達の条文と数字で整理します。出張旅費規程を作って日当や宿泊費を支給する側の話は、別の記事にまとめています。

1. 判定の根拠は、法人税基本通達9-7-6から9-7-10

法人の海外渡航費については、法人税基本通達の第9章第7節第2款に5つの通達が置かれています。まず出発点となるのが9-7-6です。

法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含む。以下この款において同じ。)は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理を認める。したがって、法人の業務の遂行上必要とは認められない海外渡航の旅費の額はもちろん、法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であってもその旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額については、原則として、当該役員又は使用人に対する給与とする。(法人税基本通達9-7-6)

国税庁法人税基本通達 第9章第7節第2款 海外渡航費

条件は2つです。業務の遂行上必要であること。そして金額が通常必要と認められる範囲であること。どちらかを外れた部分は、旅費ではなく給与になります。

ただし、9-7-6には注書きがあります。旅行期間のおおむね全期間を通じて、明らかに業務の遂行上必要と認められる場合には、社会通念上合理的な基準によって計算されている等、不当に多額でないと認められる限り、全額を旅費として経理できるとされています。日程のほぼ全部が仕事であれば、細かい按分は不要ということです。

判定の出発点は、法人税基本通達9-7-6と9-7-9その海外渡航は業務の遂行上必要か全期間を通じて必要全額を旅費(9-7-6の注)必要な旅行と観光が混在期間の比等で按分(9-7-9)必要と認められない支給した旅費は給与(9-7-6)
旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定します(法人税基本通達9-7-7)

そして、必要な旅行と必要でない旅行を併せて行った場合の按分を定めているのが9-7-9です。

その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によりあん分し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とする。(法人税基本通達9-7-9 本文)

この9-7-9には、実務上たいへん重要なただし書きが付いています。

ただし、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談、契約の締結等法人の業務の遂行のためであり、その海外渡航を機会に観光を併せて行うものである場合には、その往復の旅費(当該取引先の所在地等その業務を遂行する場所までのものに限る。)は、法人の業務の遂行上必要と認められるものとして、その海外渡航に際して支給する旅費の額から控除した残額につき本文の規定を適用する。(法人税基本通達9-7-9 ただし書)

商談が目的で行き、ついでに観光もした、という場合には、往復の航空券代は按分せず全額が旅費になります。按分するのは、そこから往復の旅費を差し引いた残りの部分だけです。海外渡航費で最も金額が大きいのは航空券ですから、この差は小さくありません。

2. どんな旅行が「業務の遂行上必要」と認められないのか

法人税基本通達9-7-7は、判定の考え方と、原則として該当しないものを示しています。

法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定するものとするが、次に掲げる旅行は、原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しないものとする。

(1) 観光渡航の許可を得て行う旅行

(2) 旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行

(3) 同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの(法人税基本通達9-7-7)

ここで押さえておきたいのが、通達が「原則として」と書いていることです。そして、この3つに当たる旅行についても救済を用意しているのが9-7-10です。

法人の役員又は使用人の海外渡航が9-7-7に掲げる旅行に該当する場合であっても、その海外渡航の旅行期間内における旅行先、行った仕事の内容等からみて法人の業務にとって直接関連のあるものがあると認められるときは、法人の支給するその海外渡航に要する旅費のうち、法人の業務にとって直接関連のある部分の旅行について直接要した費用の額は、旅費として損金の額に算入する。(法人税基本通達9-7-10)

つまり、次のように読めます。

  • (1)の観光渡航の許可とは、観光目的の査証(ビザ)で入国する旅行のことです。ただし、国によっては短期の商用でも観光査証しか選べないことがあります。査証の種類だけで結論が決まるわけではなく、現地で何をしたかが問われます。
  • (2)の団体旅行への応募とは、旅行会社が企画したパッケージツアーに申し込む形の旅行です。航空券とホテルだけのツアーを利用して現地で自ら視察や商談を行った場合には、9-7-10により、業務に直接関連する部分の費用を旅費に算入できる余地があります。この場合、ツアーの行程表と、現地で行った業務の記録の両方が必要になります。
  • (3)の主として観光目的の団体旅行とは、業界団体の慰安旅行のような性格の旅行です。視察の名目がついていても、日程のほとんどが観光であれば、これに当たります。

なお、得意先や仕入先を海外旅行に招待した費用は、その相手方に対する接待、供応、慰安に当たるものとして交際費等になり得ます。中小法人であれば年800万円の定額控除限度額の枠を使うことになります。自社の役員・使用人の渡航費とは扱いが異なりますので、費用を分けて集計してください。

国税庁No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

3. 按分の計算方法は、平成12年の法令解釈通達が定めている

9-7-9は「期間の比等によりあん分する」としか書いていません。その具体的な計算方法を定めているのが、平成12年10月11日付の法令解釈通達「海外渡航費の取扱いについて」(課法2-15、課所4-24、査調4-29)です。

この通達は、2026年9月時点でも国税庁のサイトの「法令解釈通達」に掲載されており、廃止や失効の注記はありません。通達の冒頭で廃止されているのは、これより前にあった昭和42年8月21日付の事務運営指針「海外渡航費の取扱いの実施について」のほうです。この2つを取り違えないでください。

国税庁海外渡航費の取扱いについて(法令解釈通達)平成12年10月11日

この通達は、同業者団体等が主催して実施する海外視察等の機会に併せて観光が行われる場合の処理基準を整備したものです。趣旨の部分で、法人税基本通達と所得税基本通達が基本的な考え方を示しているのに対し、統一的な取扱いを図るために設けられたと説明されています。

通達1は、金額を算定する際に検討すべき資料を挙げています。

(1) 団体旅行の主催者、その名称、旅行目的、旅行日程、参加費用の額等その旅行の内容

(2) 参加者の氏名、役職、住所

(注) 上記(1)を説明する資料については、必要に応じ、団体旅行の主催者等の所在地を所轄する税務署又は国税局を通じて入手する等、事実関係の的確な把握に努める。(平成12年10月11日付法令解釈通達1)

注書きに注目してください。旅行の内容を説明する資料は、参加した会社が出さなければ、主催者側の所轄税務署を通じて入手すると書かれています。「うちには資料がない」で終わる話ではありません。

4. 業務従事割合の計算 — 日程を4つに区分する

通達4が、業務従事割合の算式を示しています。旅行日程を「視察等」「観光」「旅行日」「その他」の4つに区分したうえで、次のように計算します。

業務従事割合 = 視察等の業務に従事したと認められる日数 ÷(視察等の業務に従事したと認められる日数 + 観光を行ったと認められる日数)

分母に入るのは視察等と観光だけです。旅行日とその他の日数は、分子にも分母にも入りません。移動日や土日が多いと業務従事割合が下がるのではないか、と心配されることがありますが、そうはならない仕組みになっています。

日数の区分は通達5が定めています。

日数の単位

昼間の通常の業務時間(おおむね8時間)を1.0日として、行動状況に応じておおむね0.25日を単位に算出します。夜間に業務に従事している場合は、その日数を視察等の日数に加算します。1日単位ではなく2時間単位で刻む、ということです。

視察等の日数

その会社の業種業態、事業内容、事業計画等からみて業務上必要と認められるもので、次のような内容の日数です。

  • 工場、店舗等の視察、見学又は訪問
  • 展示会、見本市等への参加又は見学
  • 市場、流通機構等の調査研究等
  • 国際会議への出席
  • 海外セミナーへの参加
  • 同業者団体又は関係官庁等の訪問、懇談

観光の日数

  • 自由行動時間での私的な外出
  • 観光に附随して行った簡易な見学、儀礼的な訪問
  • ロータリークラブ等その他これに準ずる会議で、私的地位に基づいて出席したもの

旅行日の日数

原則として目的地までの往復及び移動に要した日数です。ただし、現地での移動日等のうち、内容からみて視察等または観光に含めることが相当と認められる日数は、それぞれに含めます。

その他の日数

土曜日・日曜日等の休日の日数と、休日以外の日のうち視察等・観光・旅行日に区分されない休養や帰国準備等の日数です。ただし、休日のうち業務に従事したと認められる日数は視察等に含めます。逆に、旅行のほとんどが観光と認められ、かつ前後の行動状況から一連の観光を行っていると認められる場合には、休日も観光に含めます。

土日を「その他」として分母から外せるのは、あくまで旅行全体が視察として成り立っている場合の話です。日程のほとんどが観光の旅行で、土日だけ「その他」に逃がすことはできません。


やました君

0.25日単位で区分するということは、日程表だけでは足りないということです。何時から何時まで、どこで、誰と、何をしたか。この記録がなければ、区分のしようがありません。現地では毎日、簡単な行動記録をつけてください。写真、名刺、配布資料、セミナーのレジュメも、その場でしか集められません。

5. 実際にいくら経費になるのか、事例で計算する

具体的な数字で見ていきます。次のような視察旅行を想定します。

  • 2026年10月7日(水)から10月13日(火)まで、5泊7日
  • 同業者団体が主催する、アメリカ・シリコンバレーへの視察旅行
  • 参加したのは代表取締役1名
  • 旅行費用の総額 600,000円(うち往復の交通費 250,000円、その他の費用 350,000円)
日曜日行動区分
10月7日水昼過ぎに出発、現地に到着旅行日 1.0日
10月8日木現地企業を2社訪問、工場を見学視察等 1.0日
10月9日金午前は現地セミナーに参加、午後は自由行動視察等 0.5日/観光 0.5日
10月10日土自由行動その他 1.0日
10月11日日参加者でワイナリーを見学その他 1.0日
10月12日月午前は展示会を見学、午後の便で出発視察等 0.5日/旅行日 0.5日
10月13日火日本に到着旅行日 1.0日

10日と11日は土日ですから「その他の日数」です。11日のワイナリー見学は観光そのものですが、休日に行われており、日程全体を見てもこの旅行のほとんどが観光とは言えませんので、通達5(5)イの本文どおり「その他」に区分します。

業務従事割合が50%以上のときの計算(5泊7日の視察旅行の例)視察等の業務に従事したと認められる日数2.0日観光を行ったと認められる日数0.5日業務従事割合 = 2.0 ÷(2.0 + 0.5)80%往復の交通費(全額を算入)250,000円その他の費用 350,000円 × 80%280,000円旅費として損金に算入する金額530,000円
旅行費用の総額600,000円のうち、70,000円は旅費になりません。役員に対する費用であれば給与として扱われます

視察等が2.0日、観光が0.5日ですから、業務従事割合は 2.0 ÷(2.0 + 0.5)= 80% です。10%単位への四捨五入をしても80%のままですから、損金等算入割合は80%になります。

業務従事割合が50%以上ですので、通達2(3)が適用されます。往復の交通費250,000円は全額を算入し、その他の費用350,000円に80%を乗じた280,000円を加えます。合計530,000円が旅費として損金に算入される金額です。

差額の70,000円は旅費になりません。代表取締役に対する費用ですから、会社が負担したままにすると役員給与になります。役員給与が定期同額給与などに当たらなければ、会社では損金に算入できません。本人から70,000円を徴収するのであれば、出発前に立替金として処理し、帰国後に精算してください。

国税庁No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

6. 割合によって、計算の方法そのものが変わる

通達2は、損金等算入割合の水準に応じて4つの取扱いを定めています。単純に費用に割合を掛けるだけではありません。

割合によって、計算の方法そのものが変わる損金等算入割合(業務従事割合を10%単位で四捨五入)90%以上通常要する費用の全額50%以上往復交通費 + その他 × 割合10%以下全額を算入しない
10%超50%未満は原則どおり「通常要する費用 × 損金等算入割合」で計算します(平成12年10月11日付法令解釈通達2)
損金等算入割合往復の交通費その他の費用
90%以上通常要する費用の額の全額を算入する
50%以上90%未満全額を算入するその他の費用 × 損金等算入割合
10%超50%未満通常要する費用の額 × 損金等算入割合
10%以下全額を算入しない

ポイントは3つあります。

  • 損金等算入割合は10%単位です。業務従事割合の10%未満の端数は四捨五入します(通達3)。76%なら80%、74%なら70%になります。
  • 50%以上のときだけ、往復の交通費を切り出せます。この場合の往復の交通費は「業務を遂行する場所までのもの」に限られます(通達2(3))。視察先まで行く分であって、そこからさらに観光地へ移動する分は含まれません。
  • 参加者のうち別行動をとった者がいる場合は、その人だけ個別に計算します(通達2(4))。団体旅行に参加していても、途中で離団して観光に回った人は、その人の事情で業務従事割合を算定します。

そして、対象になるのは「その旅行に通常要する費用」です。通達2は、これを「その旅行費用の総額のうちその旅行に通常必要であると認められる費用」と定義しています。通常必要な範囲を超えて豪華な旅行をした場合、その超える部分は、そもそも按分の対象にも入りません。

国税庁海外渡航費の取扱いについて(法令解釈通達)平成12年10月11日 2・3・4

7. 同伴者の旅費は、原則として給与になる

配偶者や家族を同伴した場合の扱いは、法人税基本通達9-7-8が定めています。

法人の役員が法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴した場合において、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とする。ただし、その同伴が例えば次に掲げる場合のように、明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、この限りでない。

(1) その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合

(2) 国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合

(3) その旅行の目的を遂行するため外国語に堪能な者又は高度の専門的知識を有する者を必要とするような場合に、適任者が法人の使用人のうちにいないためその役員の親族又は臨時に委嘱した者を同伴するとき(法人税基本通達9-7-8)

原則は給与です。例外の3つに当たるかどうかは、次のように考えます。

  • (2)の国際会議への出席等は、配偶者同伴が前提となっている式典やレセプションに出席する場合です。招待状に配偶者の同伴を求める記載があるなど、外形的に示せる資料が必要になります。「海外は夫婦同伴が普通だから」という一般論では足りません。
  • (3)の外国語に堪能な者は、適任者が社内にいないことが条件になっています。通訳ができる従業員がいるのに配偶者を同伴したという場合には、この例外に当たりません。同伴した親族が実際に通訳や専門的な業務を行ったことを、記録で示せるようにしてください。
  • 例外に当たる場合でも、認められるのは「その旅行について通常必要と認められる費用の額」です。同伴者だけビジネスクラスといった費用は、その範囲を超えます。

なお、役員の親族であっても、その会社の従業員として通常の業務に従事している人であれば、9-7-8の「その業務に常時従事していない者」には当たりません。その人自身の渡航が業務の遂行上必要かどうかで判定します。

8. 個人事業主の場合は、何が違うのか

個人事業主の海外渡航費は、所得税基本通達37-16から37-22が定めています。内容は法人税基本通達とほぼ同じ構造ですが、条件の言葉が違います。

事業を営む者が自己の海外渡航に際して支出する費用は、その海外渡航が当該事業の遂行上直接必要であると認められる場合に限り、その海外渡航のための交通機関の利用、宿泊等の費用(家事上の経費に属するものを除く。)に充てられたと認められる部分の金額を必要経費に算入するものとする。(所得税基本通達37-16)

国税庁所得税基本通達 法第37条《必要経費》関係〔海外渡航費〕

法人税基本通達9-7-6が「業務の遂行上必要」であるのに対し、所得税基本通達37-16は「事業の遂行上直接必要」としています。また、必要経費になるのは交通機関の利用や宿泊等の実費であり、家事上の経費は除かれます。定額の日当という考え方はありません。

按分については所得税基本通達37-21が、法人税基本通達9-7-9とほぼ同じ内容を定めています。商談が直接の動機であれば往復の旅費を先に控除してから按分する、というただし書きも同様です。

同伴者については、所得税基本通達37-20が、親族や事業に常時従事していない者を同伴した場合の費用は必要経費に算入しないとしたうえで、法人税基本通達9-7-8と同じ3つの例外を挙げています。

平成12年10月11日付の法令解釈通達も、法人と個人の両方を対象にしています。通達の本文が「損金算入額又は必要経費算入額」と併記しているとおりです。

9. 証拠として残す書類

海外渡航費は事実認定で決まります。したがって、勝負は書類です。旅行前・旅行中にしか集められないものが多いので、順番に整理します。

日程表・参加者名簿・現地の資料は、旅行中にしか集められないこの期間の記録が、そのまま証拠になるあとから作れない書類がある旅行の企画・申込み2026年7月出発2026年10月7日帰国2026年10月13日税務調査で確認2028年ごろ
業務従事割合は日単位ではなく0.25日単位で計算します。行動記録がなければ、あとから割合を組み立てられません

旅行の前に

  • 旅行の案内書・募集要項・行程表。主催者、旅行目的、日程、参加費用の額が書かれたもの。通達1(1)が挙げている資料そのものです。
  • 社内の稟議書または取締役会議事録。なぜこの視察に参加するのか、事業計画とどうつながるのかを書きます。「業種業態、事業内容、事業計画等からみて業務上必要」(通達5(2))という要件に対応する記録です。
  • 参加者名簿。氏名、役職、住所(通達1(2))。

旅行の中で

  • 日々の行動記録。時間、場所、面談した相手、内容。0.25日単位の区分の根拠になります。
  • 訪問先の資料。名刺、会社案内、セミナーのレジュメ、展示会の入場券やパンフレット。
  • 写真。訪問先の看板、会議の様子など。日付が残る形で撮ります。

旅行の後に

  • 出張報告書。視察の結果と、自社の事業にどう活かすかを書きます。
  • 費用の明細。往復の交通費とその他の費用を分けて集計します。50%以上のときの計算で、この区分が必要になります。
  • 業務従事割合の計算書。日ごとの区分と、算式に当てはめた結果を1枚にまとめておきます。

これらのうち、旅行の申込みや請求書、eチケットの控えなどをメールやPDFで受け取っている場合は、電子帳簿保存法により電子データのまま保存する必要があります。印刷して紙で保存する方法は認められていません。

国税庁電子帳簿等保存制度特設サイト

法人の帳簿書類は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です。青色欠損金が生じた事業年度は10年間になります。

国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間

なお、消費税では、海外渡航に係る現地の費用は国外で行われる取引ですから課税仕入れになりません。海外出張のために支給する旅費・宿泊費・日当等も、原則として課税仕入れに該当しないとされています(消費税法基本通達11-2-1の注2)。国内出張の費用と混ざらないよう、勘定科目か補助科目で分けてください。

国税庁消費税法基本通達 第11章第2節 課税仕入れの範囲(11-2-1)

10. まとめ

  • 海外渡航費が旅費になるのは、業務の遂行上必要であり、かつ通常必要と認められる部分に限られる。それを超える部分は役員または使用人に対する給与になる(法人税基本通達9-7-6)。
  • 旅行期間のおおむね全期間を通じて明らかに業務上必要であれば、不当に多額でない限り全額を旅費にできる。
  • 業務と観光が混ざる場合は期間の比等で按分する。商談等が直接の動機であれば、業務を遂行する場所までの往復の旅費は先に控除してから按分する(法人税基本通達9-7-9ただし書)。
  • 同業者団体等の視察旅行の具体的な計算方法は、平成12年10月11日付の法令解釈通達が定めている。2026年9月時点で国税庁のサイトに掲載されており、廃止されていない。
  • 業務従事割合は「視察等の日数 ÷(視察等の日数 + 観光の日数)」。旅行日と土日等の「その他」は分母に入らない。日数は0.25日単位で区分する。
  • 損金等算入割合は10%単位に四捨五入する。90%以上なら全額、50%以上なら往復交通費を全額算入して残りに割合を乗じる、10%以下ならゼロ。
  • 親族や業務に常時従事していない者を同伴した費用は、原則として役員に対する給与。例外は3つに限られ、いずれも資料で示せることが前提になる。
  • 個人事業主は「事業の遂行上直接必要」であることが条件で、必要経費になるのは実費のみ。
  • 結論は事実認定で決まる。日程表、参加者名簿、行動記録、現地の資料は旅行中にしか集められない。

出張旅費規程を作って日当や宿泊費を支給する側の話は、次の記事で説明しています。

海外視察の費用をどこまで経費にできるか判断したい場合

当事務所では、海外渡航費の業務従事割合の計算、残しておく書類の設計、税務調査での説明資料の作成までを支援しています。旅行に行く前のご相談にも、すでに支出した分の点検にも対応しています。ご相談はこちら

よくある質問

海外渡航費は、どこまで経費になりますか?

その渡航が法人の業務の遂行上必要であり、かつ通常必要と認められる部分の金額に限られます(法人税基本通達9-7-6)。この範囲を外れた部分は、旅費ではなく役員または使用人に対する給与になります。ただし、旅行期間のおおむね全期間を通じて明らかに業務の遂行上必要と認められる場合は、不当に多額でない限り全額を旅費として経理できます。

業務と観光が混ざった旅行は、どう按分しますか?

業務従事割合で按分します。平成12年10月11日付の法令解釈通達「海外渡航費の取扱いについて」が、日程を「視察等」「観光」「旅行日」「その他」の4つに区分したうえで、業務従事割合=視察等の日数÷(視察等の日数+観光の日数)と定めています。移動日と土日等は分子にも分母にも入りません。

航空券代も按分の対象になりますか?

商談が直接の動機なら按分しません。法人税基本通達9-7-9のただし書きが、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談・契約の締結等であり、その機会に観光を併せて行う場合には、業務を遂行する場所までの往復の旅費を先に差し引いた残額について按分すると定めています。業務従事割合が50%以上の視察旅行でも、往復の交通費は全額を算入できます。

業務従事割合が低いと、計算方法まで変わりますか?

変わります。損金等算入割合が90%以上なら通常要する費用の全額、50%以上90%未満なら往復の交通費は全額でその他の費用に割合を乗じ、10%超50%未満なら往復の交通費を含めた全体に割合を乗じ、10%以下なら全額を算入しません。割合は10%単位で、業務従事割合の10%未満の端数は四捨五入します。

配偶者を同伴した場合の旅費は経費になりますか?

原則として、その役員に対する給与になります(法人税基本通達9-7-8)。例外は、常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合、国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合、外国語に堪能な者や高度の専門的知識を有する者が社内にいないため親族等を同伴する場合の3つだけです。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。海外渡航が業務の遂行上必要と認められるかどうか、日数をどう区分するかは、個別の事実関係によって変わります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。