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海外に住む家族を扶養に入れるには|国外居住親族の扶養控除の全体像と令和8年の改正
この記事の要点3行でわかる結論
- 30歳以上70歳未満の国外居住親族は、原則として扶養控除の対象外です。例外は「留学」「障害者」「年38万円以上の支払」の3つだけです。
- 必要書類は4種類。扶養控除等申告書を出すときと、年末調整のときとで、提出するものが違います。
- 令和8年分から所得要件が58万円以下→62万円以下に上がりました。令和8年8月にQ&Aも改訂され、年末調整での申告書の再提出と、特定親族特別控除申告書の扱いがはっきりしました。
海外に住む家族を扶養に入れるには、「対象になるか」と「書類を出せるか」の2つを通す必要があります。
外国籍の従業員を雇っている会社、家族を母国に残して働いている方、お子さんを海外に留学させている方。いずれも、年末調整や確定申告で国外居住親族の扶養控除が論点になります。
この制度は、令和5年分から対象者が大きく絞られ、令和7年分・令和8年分と2年続けて改正が入りました。さらに令和8年8月には国税庁のQ&Aも改訂されています。
この記事では、制度の全体像と、いま押さえておくべき改正点をまとめます。
1. まず全体像|2つのハードルがあります
| ハードル1 対象になるか | 国外居住親族のうち、年齢と状況によって対象が絞られます。とくに30歳以上70歳未満は原則として対象外です |
|---|---|
| ハードル2 書類を出せるか | 親族関係書類・留学ビザ等書類・送金関係書類・38万円送金書類の4種類。該当するものを給与等の支払者に提出または提示します |
どちらか一方では足りません。条件を満たしていても、書類が出せなければ控除は受けられません。逆に書類が揃っていても、年齢の要件を外れていれば対象外です。
※ この記事でいう「国外居住親族」とは、非居住者である親族をいいます。居住者とは、国内に住所を有するか、現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人のことです。
2. 対象になる人|年齢で3つに分かれます
| 年齢(その年12月31日現在) | 扶養控除の対象 |
|---|---|
| 16歳以上30歳未満 | 対象になります |
| 30歳以上70歳未満 | 原則として対象外。次の①〜③のいずれかに当てはまる場合だけ対象になります |
| 70歳以上 | 対象になります |
16歳未満が入っていないのは、国内の扶養控除と同じです(年少扶養親族は扶養控除の対象外)。ただし16歳未満でも、扶養控除等申告書への記載と書類の提出・提示は必要になる場面があります。住民税の非課税限度額の判定に使われるためです。
なぜ30歳以上70歳未満だけ厳しいのか
この区分は令和5年分の所得税から適用されています。海外に多数の親族がいる場合に扶養控除が積み上がる、という点が問題になった結果です。
働き盛りの年代は、本来なら自分で生計を立てているはずだ——という考え方が背景にあります。だからこそ、例外は「まだ学生である」「働けない事情がある」「実際にまとまった仕送りを受けている」の3つに絞られています。
3. 例外の3つは、それぞれ中身が違います
① 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
国内に住所または居所を有していた親族が、外国の大学や高校等に留学することになり、留学の在留資格に相当する資格をもってその外国に在留することにより、国内に住所および居所を有しなくなった人をいいます。
ポイントは「もともと日本にいた」ことです。最初から海外に住んでいて、そのまま現地の学校に通っている場合は、この①には当たりません。
② 障害者
ここが実務でいちばん誤解されます
ここでいう障害者は、日本の法令に基づく区分(精神保健福祉手帳、身体障害者手帳、児童相談所等の判定、市町村長の認定など)に限られます。
国税庁のQ&Aは、外国政府等から身体障害者手帳に相当する手帳の交付を受けている場合であっても、日本の区分のいずれにも該当しなければ障害者に該当しないとしています。外国で交付を受ける障害者手帳は日本で発行されたものではないためです。
つまり、ずっと海外で暮らしている親族について、この②を使える場面はかなり限られます。
③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
実務でいちばん使われるのがこれです。1年間に38万円以上を、その人に対して支払っていることが条件です。
判定の時期に注意が必要です。
| 扶養控除等申告書を出すとき | 提出日の現況で見積もったその年中の支払金額で判定します |
|---|---|
| 年末調整のとき | 申告書の「生計を一にする事実」欄に実際にその年中に支払った金額を記載します |
したがって、年の初めに38万円以上を見込んでいても、実際の支払額が38万円未満で終われば、年末調整でその親族について扶養控除を受けることはできません。
国税庁国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)Q1・Q4〜Q7
4. どの控除に効くのか
国外居住親族について関係するのは、扶養控除だけではありません。
| 扶養控除 | 控除対象扶養親族が対象 |
|---|---|
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | 国外に住む配偶者が対象 |
| 特定親族特別控除 | 令和7年分から新設(詳しくは6章) |
| 障害者控除 | 上記②の障害者に該当する場合 |
扶養控除の額
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上) | 48万円 |
| 同居老親等 | 58万円(国外居住親族では使えません) |
同居老親等は「納税者またはその配偶者と同居を常況としている」ことが条件なので、海外に住んでいる親については58万円の区分は使えません。70歳以上であれば48万円です。
5. 必要書類は4種類です
| 書類 | 中身 |
|---|---|
| 親族関係書類 | ① 戸籍の附票の写しその他の国・地方公共団体が発行した書類 + 国外居住親族の旅券(パスポート)の写し ② 外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(氏名・生年月日・住所または居所の記載があるもの) ※ ①か②のいずれか |
| 留学ビザ等書類 | 外国における査証(ビザ)に類する書類の写し、または在留カードに相当する書類の写し |
| 送金関係書類 | ① 金融機関の書類(為替取引により支払ったことを明らかにするもの) ② クレジットカード発行会社の書類(家族カードの利用明細など) ③ 電子決済手段等取引業者の書類 |
| 38万円送金書類 | 送金関係書類のうち、その年の支払合計額が各人ごとに38万円以上であることを明らかにするもの |
外国語で作成されている場合は、翻訳文も必要です。
原本が要るもの、写しでよいもの
| 親族関係書類 | 原本の提出または提示が必要(旅券の写しを除く) |
|---|---|
| 留学ビザ等書類 | 査証に類する書類の写し、在留カードに相当する書類の写し |
| 送金関係書類・38万円送金書類 | 原本に限らず写しでも可 |
6. いつ出すのか|申告書のときと年末調整のときで違います
ここを取り違えている会社が多いところです。扶養控除等申告書を出すときと、年末調整のときで、必要な書類が変わります。
| 区分 | 扶養控除等申告書の提出時 | 年末調整時 |
|---|---|---|
| 16歳以上30歳未満 または70歳以上 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
| 30歳以上70歳未満 ① 留学 | 親族関係書類 + 留学ビザ等書類 | 送金関係書類 |
| 30歳以上70歳未満 ② 障害者 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
| 30歳以上70歳未満 ③ 38万円以上の支払 | 親族関係書類 | 38万円送金書類 |
給与等の受給者の場合。公的年金等の受給者は、扶養親族等申告書の提出時に親族関係書類(①の場合は留学ビザ等書類も)が必要です。
配偶者控除・配偶者特別控除・特定親族特別控除・障害者控除についても、申告書提出時に親族関係書類、年末調整時に送金関係書類という組み立ては同じです。
毎年出し直す必要があるのか
親族関係書類や留学ビザ等書類は、基本的には申告書を提出する都度、提出または提示が必要です。申告書に記載された親族が本当に親族に該当するかは、申告書が提出される日の現況で判定するためです。
ただし、親族関係や住所、留学の事実に異動がなければ、前年以前に提示した書類を再度提示することも可能とされています。その場合、会社側は前年と変更がないかを本人に確認してください。
国税庁同 Q2(確認書類の一覧)・Q21(毎年の提出の要否)
7. 令和7年分・令和8年分の改正
令和7年分から|特定親族特別控除が新設されました
いわゆる「年収の壁」への対応で創設された控除です。
特定親族とは、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者と事業専従者を除く)で、合計所得金額が一定の範囲にある人をいいます。扶養控除の対象から外れる所得帯でも、段階的に控除を受けられる仕組みです。
令和8年分から|所得要件が62万円に上がりました
令和8年度税制改正により、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。
| 区分 | 令和8年分以後 | 令和7年分 |
|---|---|---|
| 扶養親族 同一生計配偶者 | 62万円以下 (給与だけなら136万円以下) | 58万円以下 (給与だけなら123万円以下) |
| 特定親族 | 62万円超123万円以下 (給与だけなら136万円超197万円以下) | 58万円超123万円以下 (給与だけなら123万円超188万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象配偶者 | 62万円超133万円以下 | 58万円超133万円以下 |
合計所得金額の要件です。カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額。
令和8年の源泉徴収事務での注意点
令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はありません。所得要件の改正は、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。
この改正で新たに扶養親族等の要件を満たすことになった親族について控除を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要です。所得要件が58万円から62万円に上がったことで、去年は対象外だった親族が今年から対象になるケースがあります。
特定親族特別控除の額(令和8年分)
| 特定親族の合計所得金額 | (収入が給与だけの場合) | 控除額 |
|---|---|---|
| 62万円超 85万円以下 | 136万円超 159万円以下 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 159万円超 164万円以下 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 164万円超 169万円以下 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 169万円超 174万円以下 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 174万円超 179万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 179万円超 184万円以下 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 184万円超 189万円以下 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 189万円超 194万円以下 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 194万円超 197万円以下 | 3万円 |
合計所得金額が62万円以下であれば、特定親族特別控除ではなく扶養控除の対象です(19歳以上23歳未満なら特定扶養親族として63万円)。
国税庁令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
8. 令和8年8月にQ&Aが改訂されました
国税庁の「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」が、令和8年8月に改訂されています(令和8年8月1日現在の法令・通達等に基づく内容)。
※ 国税庁サイトのリンク名は「令和7年6月更新」のままですが、PDFの中身は令和8年8月改訂版です。ダウンロードして表紙の日付をご確認ください。
実務に効く改訂点は、次の2つです。
年末調整では、申告書をもう一度出してもらう必要があります
扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄には、その年に国外居住親族へ送金等をした総額を記載します。ところがこの欄は年末調整の際に記載するものなので、年の初めに出してもらった申告書には書かれていません。
そのため、記載内容に異動がない場合であっても、年末調整では次のどちらかの方法で申告書を出し直してもらう必要があります。
| 方法 | やり方 |
|---|---|
| 1 | 当初提出された申告書を本人に返却し、送金等の総額を追記して再提出してもらう |
| 2 | 送金等の総額を記載した申告書を別途提出してもらう |
障害者控除を受ける国外居住親族がいる場合も、同じように「障害者又は勤労学生の内容」欄への追記が必要です。
配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書でも親族関係書類が要ります
「給与所得者の配偶者控除等申告書」や「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する場合も、親族関係書類の提出または提示が必要です。
ただし、その親族が源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族に該当するため、扶養控除等申告書を出すときにすでに親族関係書類を提出・提示している場合は、あらためて出す必要はありません。
9. 実務で間違えやすいところ
| 代表者にまとめて送金している | 送金関係書類は各人別に必要です。代表者1人にまとめて送金した場合、その書類は代表者の分にしかなりません。他の親族の送金関係書類にはならないため、人数分の控除は受けられません |
|---|---|
| 送金が年に何回もある | 原則として全ての送金関係書類が必要です。ただし同一の親族への送金が年3回以上になる場合は、一定の明細書と、その年最初と最後の送金の書類で、それ以外を省略できます。省略した書類は本人が保管します |
| 年末に送金し、着金が翌年になった | 送金を行った日が支払日です。12月中に送金していれば、実際の着金が翌年1月でも当年の支払として38万円の判定に入ります |
| 送金額が少額 | ③の38万円以外には金額基準はありません。ただし送金関係書類は「生活費または教育費に充てるための支払を必要の都度行った」ことを示すものである必要があります。年間の送金額が少額な場合、会社は送金の目的を本人に確認してください |
| 外国の障害者手帳がある | 日本の法令に基づく区分に該当しなければ、障害者には当たりません |
| 16歳未満だから不要と考える | 扶養控除の対象ではありませんが、申告書への記載と書類の提出・提示が必要な場面があります |
10. まとめ
- 国外居住親族の扶養控除は「対象になるか」と「書類を出せるか」の2段階です。
- 30歳以上70歳未満は原則対象外。例外は留学・障害者・年38万円以上の支払の3つだけです。
- 障害者の例外は日本の法令に基づく区分に限られ、外国の障害者手帳は該当しません。
- 書類は申告書提出時と年末調整時の2回に分けて必要です。
- 令和8年分から所得要件が62万円以下に。令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。
- 令和8年8月のQ&A改訂で、年末調整での申告書の再提出と、特定親族特別控除申告書での親族関係書類の扱いがはっきりしました。
外国籍の従業員が多い会社では、年末調整のたびにこの確認が発生します。書類の様式も国によって違い、翻訳も要ります。「毎年なんとなく通している」状態になっていないか、一度整理しておくことをおすすめします。
従業員の国外居住親族の扱いや、ご自身の海外の家族の扶養について迷われている方は、ご相談ください。初回のご相談は無料です。
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よくある質問
海外にいる親を扶養に入れられますか?
年齢によります。70歳以上であれば対象になります。30歳以上70歳未満の場合は原則として対象外で、留学・障害者・その年に生活費または教育費として38万円以上の支払を受けている、のいずれかに当てはまる場合だけ対象になります。なお、海外に住む親は同居していないため、同居老親等の58万円の区分は使えず、70歳以上なら48万円です。
30歳以上70歳未満の親族について、38万円以上送金すれば必ず扶養控除を受けられますか?
38万円以上を各人に支払っていることが条件のひとつです。加えて、その親族が扶養親族に該当すること(合計所得金額の要件を満たすこと)と、親族関係書類および38万円送金書類を提出または提示することが必要です。また、判定は実際にその年中に支払った金額で行うため、年の初めの見積りが38万円以上でも、実額が38万円未満なら年末調整では控除できません。
外国政府が発行した障害者手帳があれば、障害者の例外に当てはまりますか?
当てはまりません。国税庁のQ&Aは、外国政府等から身体障害者手帳に相当する手帳の交付を受けている場合であっても、日本の法令に基づく区分のいずれにも該当しなければ障害者に該当しない、としています。外国で交付を受ける障害者手帳は日本において発行されたものではないためです。
親族関係書類は毎年出してもらう必要がありますか?
基本的には、扶養控除等申告書などを提出する都度、提出または提示をしてもらう必要があります。申告書に記載された親族が本当に親族に該当するかは、申告書が提出される日の現況で判定するためです。ただし、親族関係や住所、留学の事実に異動がなければ、前年以前に提示した書類を再度提示することも可能とされています。その場合は、前年と変更がないかを本人に確認してください。
複数の親族の生活費を、代表者1人にまとめて送金しています。全員分の控除を受けられますか?
受けられません。送金関係書類は、生活費または教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものである必要があります。代表者にまとめて送金した場合、その書類は代表者の分の送金関係書類にしかならず、他の親族の分には該当しません。人数分の控除を受けるには、各人別に送金してください。
12月末に送金しましたが、相手の口座に入ったのは翌年1月でした。どちらの年の支払になりますか?
送金を行った年の支払になります。国税庁のQ&Aは、居住者が金融機関において送金を行った日に生活費または教育費の支払があったものとする、としています。したがって12月中に送金していれば、着金が翌年になっても当年の38万円の判定に含めます。
令和8年分から何が変わりましたか?
扶養親族と同一生計配偶者の合計所得金額の要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられました(収入が給与だけなら123万円以下から136万円以下)。特定親族は62万円超123万円以下になります。令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。源泉徴収事務では、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。
年末調整のときに、扶養控除等申告書をもう一度出してもらう必要がありますか?
国外居住親族について扶養控除等を受ける場合は必要です。申告書の「生計を一にする事実」欄にはその年の送金等の総額を記載しますが、これは年末調整の際に記載するものなので、当初提出された申告書には書かれていません。記載内容に異動がない場合でも、当初の申告書を返却して追記してもらうか、総額を記載した申告書を別途提出してもらう必要があります。
<注記>この記事は、国税庁が公表した資料に基づいて制度の全体像をご説明するものです。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の公表資料および法令等に基づいています。





