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海外取引の消費税のまとめ 【経費編】

この記事の要点3行でわかる結論

  • 海外に関係する経費の多くは、免税・非課税・不課税のいずれかに当たり、消費税が含まれていません。消費税の申告で控除できるのは「課税10%」の経費だけです。
  • 国際運賃、通関料、海外出張の現地費用、国際郵便、外国送金手数料などを課税仕入れとして処理すると、支払っていない消費税を控除したことになり、税務調査で全額の追徴を受けます。
  • 海外のクラウドサービスやネット広告は「電気通信利用役務の提供」として別のルールがあります。契約先が国外事業者かどうか、事業者向けか消費者向けかで扱いが変わるため、取引ごとの確認が必要です。

海外との取引がある会社の経理で、消費税の区分を間違えやすいのが経費の処理です。国内の経費であれば、ほとんどの支払いに10%の消費税が含まれていますが、海外に関係する経費はそうではありません。消費税が含まれていないものを「課税仕入れ」として処理すると、支払っていない消費税を控除したことになります。

この記事では、海外取引にともなう経費を種類ごとに並べ、それぞれが課税仕入れになるかどうかを整理します。2023年10月のインボイス制度開始と、2025年4月に始まったプラットフォーム課税で扱いが変わった「海外のデジタルサービス」についても触れます。

1. 控除できるのは、どの区分の経費なのか

消費税の取引区分には、課税、非課税、免税、不課税の4つがあります。このうち、消費税の申告で仕入税額控除ができるのは課税取引(10%または軽減税率8%)だけです。非課税、免税、不課税の支払いには消費税が含まれていないため、控除するものがありません。

仕入税額控除ができるのは「課税10%」の経費だけ海外関係の経費課税(10%)控除できる非課税・免税控除できない不課税(国外取引)控除できない
海外関係の経費は、非課税・免税・不課税のいずれかに当たるものが多く、控除できないものが大半です

海外に関係する経費は、次の3つのどれかに当たることが多く、控除できないものが大半です。

  • 不課税(国外取引)。国外で行われたサービスや、国外で買ったものは、そもそも日本の消費税の対象外です。役務の提供は、原則として「その役務の提供が行われた場所」で国内取引かどうかを判定します。
  • 免税(輸出免税)。国内と国外の間の輸送・通信・郵便、外国貨物にかかる通関などのサービスは、輸出免税の対象で税率0%です。
  • 非課税。外国為替業務の手数料や保険料は、国内の取引でも消費税がかかりません。

国税庁No.6210 国外取引

国税庁No.6551 輸出取引の免税

国税庁No.6201 非課税となる取引

例外は、輸入した商品にかかる「輸入消費税」です。これは税関に納めた消費税そのものなので、控除できます。詳しくは次の記事をご覧ください。

2. 海外関係の経費は、それぞれどの区分になるのか

海外取引でよく出てくる経費を、消費税の区分と控除の可否で整理しました。「根拠」欄の番号は国税庁タックスアンサーのコードです。

経費内容消費税の区分課税仕入れになるか(控除できるか)根拠
商品の仕入代金(海外の売主へ支払う分)国外の売主からの購入不課税(輸入時に輸入消費税を別途納付)代金そのものはならない。税関に納めた輸入消費税は控除できるNo.6563
関税税関へ納付する税金不課税ならない—
国際運賃(海上・航空)国内と国外の間の貨物輸送免税(国際輸送)ならないNo.6551
通関料(通関業者の手数料)輸入貨物の通関手続免税(外国貨物に係る役務の提供)ならない基本通達7-2-12
国内配送料(港・空港から自社まで)国内の運送課税10%なる—
海上保険料保険料非課税ならないNo.6201
海外出張:国際線の航空券国内と国外の間の旅客輸送免税(国際輸送)ならないNo.6551
海外出張:現地のホテル・交通費・食事国外で受けるサービス不課税(国外取引)ならないNo.6210
海外出張:日当国外での支出に充てる金銭課税仕入れにならないのが原則ならない(国内出張の日当は帳簿のみで控除できる)質疑応答事例(国内分)
海外出張:国内の空港までの交通費・前泊国内の交通・宿泊課税10%なる—
国際電話国内と国外の間の通信免税(国際通信)ならないNo.6551
EMSなどの国際郵便国内と国外の間の郵便免税(国際郵便)ならないNo.6551
外国送金手数料外国為替業務非課税ならない(周辺業務の手数料は課税のことがある。銀行の明細で確認)No.6201・基本通達6-5-3
海外のクラウド・ソフト・ネット広告(国外事業者から)電気通信利用役務の提供事業者向けはリバースチャージ、消費者向けは国外事業者が納税契約先ごとに要確認(本文5参照)No.6118
海外の展示会出展料・現地代理店手数料国外で行われる役務の提供不課税が原則(役務の提供場所で判定)ならないのが原則。国内で行われる部分は要確認No.6210
海外での接待・土産・雑費国外での支出不課税(国外取引)ならないNo.6210

国税庁消費税法基本通達 第7章第2節 輸出免税等の範囲(7-2-1、7-2-12)

国税庁消費税法基本通達 第6章第5節 国等の手数料及び外国為替業務等関係(6-5-3)

国税庁質疑応答事例 出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件

3. 通関業者の請求書は、どう入力すればよいのか

輸入取引で最も間違えやすいのは、通関業者から届く請求書です。1枚の請求書に、関税(不課税)、輸入消費税と地方消費税(控除できる)、通関料(免税)、国内配送料(課税10%)が並んでいます。合計額をひとつの科目・ひとつの税区分で入力すると、必ずどこかが間違います。

請求書の明細ごとに税区分を分けて入力してください。特に、輸入消費税は控除できる項目なのに、通関料や関税と一緒に「対象外」で処理されて控除が漏れている例が目立ちます。輸出売上がある会社は、輸出免税の還付とあわせて次の記事もご確認ください。

4. 海外出張の旅費は、どこまで控除できるのか

海外出張の費用は、国内で発生した部分だけが課税仕入れになります。自宅や会社から空港までの交通費、国内での前泊代は課税10%です。一方、国際線の航空券は国際輸送として免税、現地のホテル代・交通費・食事代は国外取引として不課税で、いずれも控除できません。

日当も同じ考え方です。国内出張の日当は、旅行に通常必要と認められる範囲であれば、帳簿のみの保存で課税仕入れとして控除できます。これに対して、海外出張の日当は国外での支出に充てるものなので、課税仕入れにならないのが原則です。出張旅費規程で国内と海外の日当を分けて定めておくと、経理処理も分けやすくなります。


やました君

海外出張の精算書は、「国内」「国際線」「現地」の3つに分けて集計する様式にしておくと、経理担当者が税区分で迷いません。出張者に区分させるのではなく、様式で区分される形にするのがコツです。

5. 海外のクラウドやネット広告は、どう扱うのか

海外の事業者からインターネット経由で受けるサービス(クラウドサービス、ソフトウェアの利用、電子書籍、ネット広告の配信など)は「電気通信利用役務の提供」と呼ばれ、国外取引とは別のルールで課税されます。サービスを受ける側が国内にいれば国内取引として扱われ、次の2つに分かれます。

区分どのようなもの納税する人受けた側の仕入税額控除
事業者向けサービスの性質や取引条件から、受ける側が通常事業者に限られるもの(例:国外事業者が運営する予約サイトへの掲載手数料)受けた国内事業者(リバースチャージ方式)課税売上割合が95%以上の課税期間、または簡易課税の課税期間は、当分の間「なかったもの」とされ、申告も控除も不要。95%未満なら申告したうえで控除する
消費者向け上記以外(例:誰でも契約できるクラウドサービス、アプリ、電子書籍)国外事業者提供者が適格請求書発行事業者であれば、適格請求書の保存で控除できる。登録がなければ控除できない

国税庁No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係

国税庁質疑応答事例 国外事業者に支払うインターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料

実務での注意点は3つです。

  • 契約先が国外事業者かどうかを確認する。同じサービス名でも、契約相手が日本法人であれば通常の国内取引です。請求書の発行者と登録番号の有無を確認してください。
  • 2023年10月以降、消費者向けの控除は適格請求書が要件。それまでの「登録国外事業者」の制度は2023年9月30日で廃止され、インボイス制度に一本化されました。国外事業者からの請求書に登録番号がなければ控除できません。
  • 2025年4月1日からプラットフォーム課税が始まった。国外事業者がアプリストアなどの特定プラットフォームを通じて行う消費者向けの電気通信利用役務の提供は、そのプラットフォーム事業者が納税義務者になりました。請求書の発行者が変わることがあるため、控除の可否は、受け取った請求書の発行者と登録番号で確認してください。

国税庁No.6568 プラットフォーム課税

海外のネット広告費については、契約先や広告の出し方によって事業者向けか消費者向けかの判定が変わります。金額が大きい場合は、契約書と請求書をもとに個別に確認することをおすすめします。

6. 間違えるとどうなるか

消費税がかかっていない経費を課税仕入れとして処理すると、支払額の10/110を消費税として控除したことになります。税務調査で否認されれば、その全額を追加で納めることになり、過少申告加算税と延滞税もかかります。

区分ミスは、控除した消費税がそのまま追徴になる海外出張費・国際郵便代・外国送金手数料などの年間合計1,100万円誤って課税仕入れ10%として控除した消費税(× 10/110)100万円税務調査で否認 → 追加で納める消費税100万円+加算税・延滞税
消費税がかかっていない経費を課税仕入れにすると、支払っていない消費税を控除したことになります

海外出張が多い会社や、国際郵便を日常的に使う越境ECの会社では、対象になる経費が年間で数百万円から数千万円になることも珍しくありません。1件ごとの金額は小さくても、数年分をまとめて指摘されると負担は大きくなります。

7. 経理でのミスは、どうすれば防げるのか

  • 科目に補助科目を作る。旅費交通費なら「国内」「海外」、荷造運賃なら「国内」「国際郵便」、支払手数料なら「外国送金」のように分けておくと、税区分の間違いを月次で見つけられます。
  • 請求書の明細ごとに入力する。通関業者や運送会社の請求書は、合計額ではなく明細の行ごとに税区分を付けて入力します。
  • 海外での支払いは法人カードにする。明細に取引地と通貨が残るため、国外取引であることを後から確認しやすくなります。両替の手間も省けます。
  • 会計ソフトの税区分を整えておく。輸出免税・輸入消費税・不課税の区分が使いやすい状態になっているかを、貿易を始めるときに一度見直してください。

8. まとめ

  • 仕入税額控除ができるのは課税10%(軽減8%)の経費だけ。海外関係の経費は免税・非課税・不課税が多く、控除できないものが大半。
  • 国際運賃・通関料・国際線航空券・国際電話・国際郵便は免税、外国送金手数料・保険料は非課税、現地のホテルや接待費は不課税。いずれも控除できない。
  • 例外は輸入消費税。税関に納めた消費税は控除できる。通関業者の請求書は明細ごとに区分する。
  • 海外のクラウド・ソフト・ネット広告は「電気通信利用役務の提供」。事業者向けはリバースチャージ、消費者向けは適格請求書の有無で控除の可否が決まる。2025年4月からはプラットフォーム課税もある。
  • 区分を間違えると、控除した消費税の全額が追徴される。補助科目と請求書明細ごとの入力で防ぐ。

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当事務所では、輸出入取引の消費税に特化した「消費税還付コンサルティング」を行っています。過去の申告書の点検と更正の請求にも対応しています。消費税還付のご相談はこちら

よくある質問

海外出張の費用は消費税の課税仕入れになりますか?

国内で発生した部分だけが課税仕入れになります。自宅や会社から空港までの交通費、国内での前泊代は課税10%です。一方、国際線の航空券は国際輸送として免税、現地のホテル代・交通費・食事代は国外取引として不課税で、いずれも控除できません。海外出張の日当も、国外での支出に充てるものなので課税仕入れにならないのが原則です。

国際運賃や通関料は課税仕入れになりますか?

いいえ。国内と国外の間の貨物輸送(国際運賃)は輸出免税、外国貨物にかかる通関料も輸出免税の対象で、いずれも控除できません。港や空港から自社までの国内配送料だけが課税10%です。通関業者の請求書は、明細の行ごとに税区分を分けて入力してください。

外国送金手数料に消費税はかかりますか?

外国為替業務の手数料は非課税で、仕入税額控除はできません。海上保険料などの保険料も非課税です。ただし、外国為替の周辺業務にあたる手数料は課税になることがあるため、銀行の明細で内訳を確認してください。

海外のクラウドサービスやネット広告の消費税はどうなりますか?

「電気通信利用役務の提供」として、国外取引とは別のルールで扱われます。事業者向けはリバースチャージ方式で受けた国内事業者が納税し、消費者向けは国外事業者が納税します。消費者向けの控除は、提供者が適格請求書発行事業者であることが要件です。2025年4月1日からはプラットフォーム課税も始まり、請求書の発行者が変わることがあります。

消費税の区分を間違えるとどうなりますか?

消費税がかかっていない経費を課税仕入れとして処理すると、支払額の10/110を消費税として控除したことになります。税務調査で否認されれば、その全額を追加で納めることになり、過少申告加算税と延滞税もかかります。1件ごとの金額が小さくても、数年分をまとめて指摘されると負担は大きくなります。

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<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。