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国外財産調書の提出状況を眺めてみました
この記事の要点3行でわかる結論
- 12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を持つ居住者は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります。非永住者は対象外です。
- 令和6年分の提出は14,544件、総額8兆1,945億円でした。前年から件数は9.8%、金額は26.3%増えています。財産の3分の2は有価証券です。
- 出していれば加算税が5%軽減され、出していなければ5%加重されます。書類の提示を求められて応じなければ加重は10%になります。
国税庁から「令和6年分の国外財産調書の提出状況について」が公表されました。海外に資産を持つ方がどれくらいいて、どんな財産をいくら持っているのかが分かる、年に一度の統計です。この記事では、公表された数字を確認しながら、制度の要点と提出しなかった場合の不利益を整理します。
1. 国外財産調書とは
国外財産調書は、海外に一定額以上の財産を持つ方に、その内容を自分で申告してもらう制度です。平成26年1月から施行されました。適正な課税を確保するために、国が把握しにくい国外財産の情報を本人から提出してもらう仕組みです。
提出義務があるのは、次の両方に当てはまる方です。
- 居住者(非永住者を除く)であること。日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の方は非永住者に当たり、対象外です。
- その年の12月31日時点で、価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していること。
提出先は住所地等を所轄する税務署長で、期限は翌年の6月30日です。かつては確定申告と同じ3月15日でしたが、令和4年度の改正により、令和5年分から6月30日に変わりました。確定申告を終えてから準備する時間が確保された形です。
2. 令和6年分は何件提出されたのか
公表された数字は次のとおりです。
件数も金額も前年から増えています。特に総財産額は1年で26.3%増えました。円安により外貨建て資産の円換算額が膨らんだこと、海外の株式市場が堅調だったことが影響していると考えられます。
提出先を国税局別に見ると、偏りがはっきり出ています。
| 国税局 | 提出件数 | 構成比 | 財産額 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 東京局 | 9,262件 | 63.7% | 6兆6,047億円 | 80.6% |
| 大阪局 | 2,094件 | 14.4% | 7,200億円 | 8.8% |
| 名古屋局 | 933件 | 6.4% | 3,005億円 | 3.7% |
| その他 | 2,255件 | 15.5% | 5,694億円 | 6.9% |
| 合計 | 14,544件 | 100% | 8兆1,945億円 | 100% |
件数では東京局が3分の2、金額では8割を占めます。1件あたりの財産額を比べると、東京局は約7億1,000万円、その他の局は約2億5,000万円です。大口の保有者が関東圏に集中していることが読み取れます。
やました君
全国で14,544件という数字を、多いと見るか少ないと見るか。5,000万円超の国外財産を持つ方が日本に1万5千人弱しかいないとは考えにくく、提出していない方が相当数いるとみるのが自然です。国税庁も「提出を要すると見込まれる方への文書照会を継続する」と明記しています。
3. 財産の種類別の内訳
どのような財産が申告されているかを見ると、有価証券が3分の2を占めます。
| 財産の種類 | 総額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 有価証券 | 5兆4,817億円 | 66.9% |
| 預貯金 | 8,817億円 | 10.8% |
| 建物 | 5,397億円 | 6.6% |
| 貸付金 | 2,618億円 | 3.2% |
| 土地 | 1,686億円 | 2.1% |
| 上記以外の財産 | 8,611億円 | 10.5% |
| 合計 | 8兆1,945億円 | 100.0% |
海外の株式や債券、投資信託といった有価証券が中心で、外貨預金がこれに続きます。建物と土地を合わせた不動産は8.7%です。金額の伸びが大きかったのは有価証券と考えられ、これは為替と株価の両方の影響を受ける資産です。
海外の金融資産や不動産を持つ場合の課税関係は、別の記事で説明しています。
4. 出さないと加算税はどうなるのか
国外財産調書には、提出を促すための仕組みが組み込まれています。国外財産に係る所得税や相続税の申告漏れが見つかったとき、調書を出していたかどうかで加算税の割合が変わります。
| 状況 | 加算税の扱い |
|---|---|
| 期限内に提出し、その財産が記載されていた | 5%軽減 |
| 提出がない、または記載すべき財産の記載がない | 5%加重 |
| 取得・運用・処分に係る書類の提示等を求められ、指定期限までに応じなかった | 軽減は適用されず、加重は10%になる |
提出していれば5%引かれ、していなければ5%上乗せされます。同じ申告漏れでも、調書の有無で10ポイントの差がつく計算です。
令和6事務年度の実地調査では、軽減措置が221件・増差所得等57億円、加重措置が366件・170億円に適用されました。加重のほうが件数でも金額でも上回っています。
国税庁令和6年分の国外財産調書の提出状況について(令和8年1月)
5. 提出しないと罰則はあるのか
正当な理由なく期限内に提出しなかった場合や、偽りの記載をして提出した場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。ただし、提出しなかったことについて情状により刑を免除できる規定もあります。
実務で意識しておきたいのは、罰則そのものよりも情報の把握が進んでいる点です。海外への送金や海外からの送金は、100万円を超えると金融機関から税務署へ国外送金等調書が提出されます。その提出枚数は令和6事務年度で923万枚に達しています。加えて、各国の税務当局との間で金融口座情報を自動的に交換する仕組みも動いています。
6. 財産債務調書と何が違うのか
似た名前の制度に「財産債務調書」があります。こちらは国内外を問わず財産と債務を報告するもので、提出義務の基準が異なります。
| 国外財産調書 | 財産債務調書 | |
|---|---|---|
| 対象の財産 | 国外財産のみ | 国内外のすべての財産と債務 |
| 提出義務者 | 居住者(非永住者を除く)で、12月31日時点の国外財産が5,000万円超 | ①確定申告書を提出する方等で、退職所得を除く各種所得金額の合計が2,000万円超、かつ12月31日時点で財産3億円以上または国外転出特例対象財産1億円以上 ②12月31日時点で財産10億円以上の居住者(所得の要件なし) |
| 提出期限 | その年の翌年6月30日 | |
財産債務調書の②は令和4年度の改正で追加され、令和5年分から適用されています。所得が少なくても財産が10億円以上あれば対象になる点が、それまでとの大きな違いです。両方の要件に当てはまる方は、どちらも提出する必要があります。
7. まとめ
- 12月31日時点で国外財産が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する。
- 令和6年分の提出は14,544件・8兆1,945億円。件数は前年比9.8%増、金額は26.3%増。
- 財産の66.9%は有価証券。件数の63.7%、金額の80.6%が東京局に集中している。
- 提出していれば加算税が5%軽減、なければ5%加重。書類の提示に応じなければ加重は10%。
- 国外送金等調書や各国との情報交換により、国外財産の把握は進んでいる。
国外財産調書の提出が必要かどうか判断がつかない場合
当事務所では、国外財産の評価と調書の作成、提出後の税務署からの照会対応までご相談を承っています。お問い合わせはこちら
よくある質問
国外財産調書は、いくらから提出が必要ですか?
その年の12月31日時点で、国外財産の価額の合計額が5,000万円を超える場合に必要です。提出義務があるのは居住者で、非永住者は対象外です。提出先は住所地等を所轄する税務署長になります。
国外財産調書の提出期限はいつですか?
その年の翌年6月30日までです。かつては確定申告と同じ3月15日でしたが、令和4年度の改正により令和5年分から6月30日になりました。財産を判定する日(12月31日)から約6か月の準備期間があります。
国外財産調書を出さないと、どうなりますか?
加算税が重くなります。国外財産に関する所得税や相続税の申告漏れが見つかったとき、提出がない場合や記載すべき財産の記載がない場合は加算税が5%加重されます。取得・運用・処分に係る書類の提示等を求められ、指定期限までに応じなかったときは加重が10%になります。
国外財産調書を出しておくメリットはありますか?
あります。期限内に提出し、その財産が記載されていれば、後日その財産に関する申告漏れが見つかっても加算税が5%軽減されます。提出しない場合の5%加重と合わせると、同じ申告漏れでも10ポイントの差がつく計算です。
国外財産調書と財産債務調書は何が違いますか?
対象の財産と提出義務者が違います。国外財産調書は国外財産だけが対象で、12月31日時点の国外財産が5,000万円超の居住者(非永住者を除く)が提出します。財産債務調書は国内外すべての財産と債務が対象で、所得2,000万円超かつ財産3億円以上などの方や、財産10億円以上の居住者が提出します。両方に当てはまれば両方必要です。
<注記>この記事は、海外に資産をお持ちの方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。





